矢萩:だけど、後者の、できてないことがバレたら嫌、という気持ちが混ざっている場合は、「成長するため」という勉強の本来の目的を見失っている状態です。放っておくと、ごまかしたり、ウソをついたりするようになりかねないので、やはり何らかの働きかけは必要です。親じゃない相談できる人を用意できるといいですね。家庭教師みたいな存在なのかもしれないし、いとこのお兄ちゃんかもしれない。親子のあいだに入って対話できる相手がいれば、何かしらの対策を取ることはできるのかなと思います。
■シンプルにしゃべりたくないだけ、の可能性も
安浪:このご質問を読んですぐに思い浮かぶ教え子の家庭があって。お姉ちゃんと妹を教えていたんですが、お姉ちゃんはすごくしゃべるんですが、妹は元から親に対してもペラペラしゃべるほうではなかったんです。さらに妹は6年生の夏前あたりからめっきりしゃべらなくなって、私に対してもクールな対応になってきたんです。同時にそのタイミングで背も伸びて、見た目も別人のように変わってきました。だからプライドというより、性格的なものや成長のタイミングもあるのかな、と思います。つまりシンプルにしゃべりたくない、というだけ。あともう一つ、やはりわかっていない、という可能性もあるとは思います。
矢萩:次に、ご質問者さんのもう一つの問題、頭の中で思い出す、繰り返すことに意味があるのか、に焦点を当ててみましょう。記憶に関してはいろいろな実験や論文が出ていますが、だいたい1日で6〜7割は忘れるといわれています。ですから、それが覚えるべきことなのであれば繰り返したほうがいいのは確かです。もちろん思い出すことも有効です。やらないよりやったほうがいい。ただ、書いたり話したりすることには敵わないんです。書くことによって、自分で文字を見て、またその情報が目から入ります。つまりアウトプットがインプットにつながる。これは音読も同じで、声に出して読むことで、その情報がもう一度、音声として自分の耳に入ってくるので、インプットの回数が増えます。これを繰り返しすれば、頭の中で思い出すより定着に効果的なのは当然の話です。
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