■親からの攻撃をシャットアウトする言い訳?

安浪:そもそも「頭の中で思い出してるから」っていうお子さんの言葉、本当に信じているんでしょうか(笑)。これって親からの攻撃をシャットアウトするための言い訳かな、と思うんですが。

矢萩:まあ、大半はそうでしょうね。もし仮に本当にやっているとして、頭の中で何回も何回も意図的に繰り返せるんだったら定着できると思いますが、それをやるためにはかなりのモチベーションとスキルが必要です。だから小学生にそれができているとは思わないほうが安全かな、と思います。実際にテストで点数も取れています、というように結果が出ているなら信用してあげてもいいと思いますが。

安浪:書いたり、言葉に出してアウトプットすることによって脳に定着するという話、今は脳科学はもちろん、子育て本などでもいろいろ言われているじゃないですか。だからよけい親御さんたちは「やらせなくちゃ」と思ってしまうのかもしれませんが、普通に学校や塾の宿題でノートに書いたりすることでアウトプットできていたら、無理に親に話すことにこだわらなくてもいいんじゃないかな?って思います。

矢萩:あと、よく「人に話すのではなく、一人音読でも効果はありますか?」と聞かれたりするのですが、記憶を定着するための音読でしたら一人でも効果があります。暗記したいものをブツブツ声に出す感じですね。だけど理解をするための音読、つまり「ちゃんと読めているのか」は、まわりで聞いている人がいないときちんと判断できないんです。意味がわからないまま音読していると、変な場所で切ったりしてとても理解しているとは思えない読み方をしていることがあります。そういう場合、聞きながらツッコミを入れたり、フォローしてあげたりする人が必要です。

安浪:だんだん成長していくと大人に対して壁を作り始める子っているじゃないですか。そういう子って勉強のやり方も自分で確立したがるので、親に口を挟まれるのを嫌がるんですよね。とはいえ子どもなのでそのやり方も間違った方向にいくことも多いです。でもしゃべりたくないなら無理にさせることはないと思っています。そうは言っても、勉強以外の会話はしてあげてほしいなと思いますね。親は子どもの気持ちを知りたいからいろいろ聞いて過干渉になって余計にこじれてしまうことがありますが、質問するだけでなく、いわゆる普通の会話をしてほしいです。

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