「親の理想に見合った結果が出ないことを理由に子どもを叱咤激励し続けると、その子どもは失速してしまいます。また、『他の子と比べて劣っている』と考えることも、子どもへの風当たりを強くします。たとえ子どもがどんな状況であっても、『今日も我が子なりにいい感じ』、『これまで親子で一緒に頑張ってきたからこそ今がある』という発想を大切にしてください」

 いかにもやる気がなくぼんやりしている状態でも、肯定的に捉えたほうがいいのでしょうか。

「ぼんやりしてしまう原因があるはずです。受験勉強以外にも、学校や習い事などさまざまな視点から原因を考えてみてください。たとえテストの点数が悪くても、頑張って勉強できる5分間があれば、それは希望です。もし悩みを打ち明けてくれたら、解決することによって、今後伸びていくきっかけになるかもしれません」

 良い伴走とは、何が得意か、どんな話なら乗るか、という子どもの気持ちを重視した視点で接すること。逆に、悪い伴走とは、「勉強をしたかどうか」にしか興味がない付き合い方だといいます。スケジュール管理やプリントコピーなどに熱心になりすぎず、子どもの心に向き合う伴走を心がけたいものです。

悪い伴走から脱却する鍵は、親の柔軟性

「悪い伴走」の影響で、子どもの身体に“SOSサイン”が出ることも。集団塾では受験本番が近づく6年生の2学期以降、机の下に落ちている髪の毛の量をチェックするといいます。ストレスが強くかかっている子は、髪の毛を抜く傾向があるからです。西村先生はこう言います。

「抜毛は中学受験生に多くみられる行為ですが、親御さんは気づいていないケースが多い。もし私が気づいたら、親御さんに抜毛の事実を伝え、『プレッシャーが強すぎる状態なので、リフレッシュする時間をつくってください』とお願いするようにしています。理解のあるお母さんの場合は、子どもはすぐに回復します。一方、『わかりました』と言って帰られても、それまでと同様に勉強を促すご家庭では、なかなか子どもの回復が見られません」

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