深井 そう思っていた人にこそ聴いてほしいです。僕も昔は歴史なんて興味ありませんでした。今のような科学知識もインターネットもない時代の出来事や故人から学べることなんてないと思っていましたから。でも二十歳のとき、実家にあった中国の古典を読んでガツンとやられたんです。
高濱 それはお父さんの本?
深井 そうです。うちは昔から貧乏だったんですが、本だけは山のようにあって。そして両親はすごく愛にあふれた人だったけれど、それに輪をかけるほどの放任主義で、僕が何をしようといっさい何も言わなかった。勉強してもほめられなかったし(笑)。父はとにかく本ばかり読んでいる人でしたね。その中の本をたまたま手にとったという。
高濱 その本を持っていたお父さんに感謝ですね。どんな本だったんですか。
深井 孔子です。そこに出てくる孔子の考え方や思想が、授業とはまったく違う形で響いてきて。僕の解釈ですけど、国を統治するために必要なのは尊敬だと孔子は言っているんです。尊敬でつながった人間関係は強固に機能すると。その通りだ! 孔子はなんて賢いんだと思いました。実は僕はそれまで尊敬できる人に会ったことがなくて。親が放任主義だったこともあり、なんでも自分で決めてきたところがありました。唯一尊敬できたのがミュージシャンだったんです。
高濱 あ、わかる! 僕も同じだ。誰だったんですか?
深井 マリリン・マンソン。反骨の人。彼だけは超尊敬していて、思春期は彼の音楽を聴いて精神を保っていたところがありました。
高濱 わかるなあ。僕はジョン・レノン。彼の音楽ばかり、テープがすり切れるまで聴いていたもんですよ。
深井 音楽は人生の転換点になりますよね。そして次の転換点が歴史だったんです。この世にもういない人なのに、こんなにも尊敬できる人がいるのかという事実は衝撃的でした。
高濱 それで歴史にハマった。
深井 それからは古典を読みまくりました。中国史から始まって日本史、世界史、古代史、必然的に哲学や宗教……読めば読むほど、古典には今の自分たちに通じる出来事や魅力ある人物がひしめいていることがわかりました。
次のページへ歴史の授業で、その面白さに気づけるかは難しい