高濱 ただ歴史の授業で、その面白さに気づけるかは難しいんだよな。
深井 年号と出来事だけじゃなくて、そのとき当事者たちが何を考えていたのか、そこから何を学べるのかをトータルに話してくれる先生がいればいいんでしょうけれどね。コテンラジオではいろいろな視点から歴史を眺めてみたいと思っています。僕はこれまで歴史をたくさん勉強した結果、最近ようやく教育の大切さに気づいたんですよ。
自分ができることで社会を良くしたい
高濱 ほら来ました、来た来た! ようこそ、教育の世界へ(笑)。教育が人に与える影響は本当にとても大きいから。
深井 COTENという会社も、自分ができることで社会を良くしたいと思って作りました。世界史データベースはお金にはならないかもしれないけれど、きっと世の中の役に立つし、次の世代にもつないでいけると。一方で、良い社会というのは時代や文化によってもガラリと変わってしまうものでもある。
高濱 正解はないよね。
深井 はい。結局、人間の価値基準って、自分の経験値や生まれ育った文化によって形成されるんですよね。そもそも自分一人の経験だけで、良い社会とは、なんていう答えを出すのは無理です。これまで人間がやってきた試行錯誤や社会の系譜を学ばないと、何が問題かわからないし解決もできない。だから「社会を良くするためには教育が必要だ」という、至極当たり前に見える結論が、歴史を学ぶことでズドンと僕の腑に落ちた。僕はそのために1500冊くらい本を読んだんだなと思いました。
高濱 人も社会も幸せになるためには教育が必要。まさに人文知だね。世界を読み解き、世界を再構築することの大切さ。
深井 ですよね……。これまでの50年間は「いかにうまく生きるか」というノウハウが重視された時代だったと思うんです。でもその価値基準はもはや崩壊しました。今は「どう生きるか」が問われています。僕たちはその問いを持ち続ける、人文知の時代に突入したと思っています。そしてそこでは、歴史や哲学が必須になる。
※「AERA with Kids2023年秋号」から抜粋
(構成/篠原麻子)
朝日新聞出版