■いくら安全圏でも油断できないのが中学受験


安浪:安全圏の学校を目指してのびのびと勉強ができるというのは、とても健全ですし、勉強を通して自分に盤石な自信が持てるようにもなると思います。ただ、小学生の難しさというか、中学受験や入試の難しさって、オリンピックとかコンクールなどにも通じることだと思いますけれど、当日の状態がすごく大事なんですよね。小学生の場合「あるある」なのは、6年生の11月あたりで過去問が全部合格ラインを上回って取れちゃうと、やっぱり油断してその後失速していくことが多いんですよ。その一方で、まだ足りないって必死にやっている子たちもいる。成長しようと頑張っている子たちの最後の成長カーブは本当にすごくて、その上昇気流の勢いに乗って合格を取っていく子も多いんです。もちろん、勢いがあっても必ずしも御縁をいただけるかどうかわからないのが入試の難しさですが、やっぱり入試って当日に向けてのコンディションがすごく大事だな、ってしみじみ思います。オリンピック選手だって当日のコンディションがよくて気迫があると、本来の実力が上の人に勝ったりすることがあるじゃないですか。だから入試はいくら安全圏であっても油断できない、ってことはありますね。


矢萩:そういったアスリート的な体験ってすごく大事だと思うし、そういう感覚は持っていたほうがいいと思います。最初のご質問の話に戻ると、そもそも偏差値っていうのはみんなが同じ問題を受けて、その中で出た数字であって、その学校の出題傾向とばっちり合っているか、というと、どの学校ともちょっとずつずれているわけです。ですから、偏差値だけをみて諦めることもないですし、安心できるわけでもありません。繰り返しますが、偏差値だけでなく学校と入試問題、両方しっかり見ておくことはすごく大事です。大手塾だとか塾講師は入試問題を扱うプロではあります。ですが、学校のことは知らない先生が大半です。そこは学校を知っている先生を探すか、あるいはご家庭で学校をちゃんと見に行ったり、在校生に話を聞いたりすることの重要度は高まってくると思いますね。

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