手を放すための「あえての受験」も
「近年はとくに多忙な保護者の家庭で、早くから子どもの手を放すために、小学校受験にシフトする傾向も。全寮制の中高一貫校に入れる例も増えています。いずれにしても、親が指示しないと勉強してくれないようでは、受験もあまり意味がありません」
忙しいからこそ中学受験という選択肢もあるようだ。
「いま」を大切にして中学受験を豊かな経験に
事前にしっかり話をしてあり、子どもも納得している場合を除き、中学受験が失敗したから高校受験に回る――というのは、あまりいい決断ではないと安田さんは言う。
「そもそも高校受験とはまったく別のものであることを、中学受験を考える際に保護者が理解しておくべきです」
また、子どもが嫌がっていない限り、余裕があるなら中学受験に挑戦することは望ましいことだとも語る。それは大学への最短ルートに乗せるためではなく、受験には経験を増やすという代えがたい価値があるからだ。
「学校によって異なる入試問題も実に素晴らしいものがあります。保護者にとっても勉強になるので、ぜひ見てみてほしいですね。社会を知るきっかけとして、中学受験の勉強はとても有意義です」
わが子の6年間を価値あるものにしよう
高校受験がないことのメリットも、6年間という時間でより多くの経験ができるところにある。安田さんは「日本の教育の問題点は、大切な『いま』という時間を、次の時間のために使ってしまうところ」だと指摘する。中学時代を高校受験のために、高校時代を大学受験のために消費してしまうのはあまりにもったいない。
「大学受験のための中学受験にせず、わが子の6年間を価値あるものにできる進路を選んでほしいと思います」
■安田理/安田教育研究所代表。早稲田大学卒業後、大手出版社で受験情報誌、教育書籍の企画編集にあたる。2002 年に独立し、中学受験の専門家・コンサルタントとして、執筆、講演、セミナーの開催など幅広く活躍中。
(文・鈴木絢子)
※AERA進学MOOK『カンペキ中学受験2024』より
朝日新聞出版