ととむちゃん、お笑いライブには行ったことある? 行ったことがないなら、きっとすごく驚くはず。舞台上でおかしなことをやっている芸人がたーくさんいるから。お客さんに覚えてもらえるように、いろんな工夫もしている。眼鏡をかけたり蝶ネクタイをつけたり、よしおみたいに半裸になったり……。どうやって自分の個性を出して、キャラクターを確立しようかと、悩んで、もがいているんだ。

 その点、ととむちゃんはすでにキャラクターがある、って考えることもできる。だからね、芸人からするとうらやましくてたまらないんだ。

「音楽の先生は芸人とは違う」って思ったかな? でもさ、よくよく考えてみて。音楽って、「うまい・へた」じゃなくって自分を表現することがとても大事だと思うんだ。そうじゃないと伝わらないから。送ってくれた相談に「音楽の楽しさや豊かさを一緒に感じたい」って書いてくれているね。そう思えているなら、怖がらずに自分を表現することが大事なんじゃないかな。舞台に立っておかしなことをやっている芸人くらいね。

 思い返すと、よしおが教わってきた音楽の先生って、子どもから見たら笑ってしまうこともあるぐらい、大げさな表現で教えてくれる人が多かった気がする。生徒が自分を表現するのをためらわないよう、先生が率先して大げさに表現していたのかもしれない。先生が一番の表現者であることが、生徒の表現力を伸ばすことにもなるからね。だから、「うまくやろう!」よりも、「自分を表現しよう!」って思えたらいいよね。ととむちゃんの、君にしかない個性を思いっきり表現してほしいな、って思ったよ。

■弱さがあるからこそ相手に寄り添える

 最初にも話したけど、よしおはもともと緊張しい。どうやって緊張をほぐしているかも話したけど、ネタのはじめに「ウィ~~~~」ってやるのは緊張をほぐすためなんだ(笑)。「そんなの関係ねぇ!」ってギャグも、ネタを忘れてもそう言っちゃえば成立するようになっているんだよね。緊張しいだからこそたどり着いたネタなのかもしれない。

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