その原体験は小学生のころ。よしおは野球をやっていたんだけど、試合でバッターボックスに立つと緊張してセカンドゴロを連発していた。どうしたら打てるのかわからなかったとき、コーチに「遠くを見ろ!」って言われたんだ。
バッターボックスに立つとき、いつもピッチャーばかりを気にしていたけど、コーチのアドバイス通りに遠くを見たら、はじめてセンターが見えた。そうしたら、ふっと周りも見渡せるようになって、球を打つことができたんだ。緊張すると、目の前のことで気持ちがいっぱいになって、視野が狭くなる。体ってすべてつながっているから、目線の使い方で気持ちも変わるんだなあ、ってことを実感したよ。
芸人になってからも、この方法はとても役に立った。ピン芸人の大会「R-1」の決勝戦に出たときの緊張はものすごくて、数メートル先のスタッフさんの姿さえ目に入っていなかった。だけどよしおは野球のコーチに教わったことを思い出して、できるだけ遠くを見るようにしたんだ。緊張が一瞬でなくなるわけではないけど、ふっと周りが見渡せるようになったら心に余裕ができたよ。
他にも深呼吸とか、無理やり笑顔をつくるとか、体をまず意識してみると心が落ち着くこともあるよ。これをしたら落ち着く、っていうルーティンワークをつくるのもいいかもしれない。
■緊張するときとしないときの差
ただ、緊張をほぐす方法を知ったとしても、緊張しいの人がいきなり緊張しない人になるのはすごく難しいよね。緊張しいのよしおだけど、あまり緊張しないときもある。その差ってなんだろうな、ってよしおなりに考えてみた。
たとえばネタを披露するとき。一番緊張するシチュエーションは、新しいネタをテレビ番組で収録するとき。一番緊張しないのが、大学の学園祭や商店街でのイベント、ショッピングモールでの催し物なんかの営業でいつものネタをするとき。
前者は「初めてのネタ」「普段とは違う環境」で、さらに「うまくできるかな」「どんな反応をされるかな」っていう心配事がある。一方後者は、「いつもやっているネタ」「慣れている環境」なんだ。何度もやっているネタならどこで盛り上がるのかもわかるし、慣れている環境だとだいたいの流れも頭に入っている。つまり違いは「経験」なんじゃないかな、って考えた。
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