「ワイン造りに適したブドウを作るためには30年以上の年月が必要です。日本は雨が多く、特に9月は秋雨前線がやってきて台風もくる。世界で一番ブドウ作りが難しいともいえる環境です。そこで生産者たちは、ブドウ一つひとつに笠をつけたり、ビニールハウスのように上部を覆ったり。試行錯誤を繰り返し、ワインに適したおいしいブドウを育てることに成功しました。80年代のワインブーム時に植えたブドウが、30年ほど経って、おいしく育ったといえるでしょう」
現在、全国各地には400以上のワイナリーがあり、それぞれの土地の特徴を生かしたワイン造りが盛んだ。こうしたなかから、国際的なコンクールで賞を獲得するワインも登場している。 イギリスの国際ワインコンテスト「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)2021」では、白百合醸造(山梨県)の「ロリアン 勝沼甲州2019」が国内最高得点・最高賞となるプラチナを受賞。また、広島県三次市に昨夏開業した個人経営のワイン醸造所「ヴィノーブルヴィンヤード&ワイナリー」の白ワインは、世界的に有名なイギリスの酒類コンテスト「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)2022」で金賞に輝いた。
背景には、ブドウの質のみならず、ワイン造りの技術向上もあるという。
「国内のワインが最初に大きな賞を受賞したのは、国内最大手ワインメーカー『シャトー・メルシャン』の桔梗ケ原メルローで、89年のこと。その後、それに続けと海外で修業を積む醸造家たちが急増し、コンクールに勝つためにヨーロッパ受けするワインを造るワイナリーも登場しました。その結果、日本のワイナリー、ワインの世界的な評価が上がっているのです」
日本ワインの最大の特徴は、「料理の邪魔をしないことにある」という。
「日本ワインには、和食を食べて感じるうま味成分のような “だし感”があるといわれます。そのため、食中酒に最適なんです。料理になじみ、味の邪魔をしない。海外のワインのなかには味がはっきりしているものもあり、一緒に飲むと料理の繊細な味を消してしまう可能性があるんです」
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