年も明けて中学受験もいよいよ本番間近。ラスト数週間になったら気をつけたいのが、本番で脳のパフォーマンスをいかに上げられるかということ。「AERA with Kids冬号」では、中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生が、脳神経科学の専門家・枝川義邦先生に「受験直前に脳のパフォーマンスを上げる生活術」について聞きました。

*  *  *

安浪:本番間近になってくると、子どもたちにも疲れがたまってきやすくなります。脳のパフォーマンスを考えた場合、親が気をつけてあげるべきことはありますか?

枝川:脳の働きと睡眠は深く関係していますから、睡眠時間はちゃんと確保してあげてほしいですね。眠る時間を削って勉強するというのは、子どもの脳の自然な発達を考えても望ましいことではありません。それに勉強で新しく覚えたことを脳に記憶として定着させるのにも、睡眠が大きな働きをしているんですよ。

安浪:知識は寝ている間に定着するから、寝る前に暗記系の勉強をするといいとよくいわれていますよね。

枝川:そのとおり。寝る前は記憶のゴールデンタイムです。これには二つ理由があって、ひとつは、脳内の情報整理が睡眠中に行われるから。寝るまでに体験したことを情報として整理し、必要な情報だけを記憶として定着させる作業を行っている。もうひとつは、睡眠中は新しい情報がシャットダウンされるから。起きていると脳に次々と新しい情報が入ってきてしまい、せっかく覚えたことが新しい情報と干渉し合って、正確に記憶されにくくなってしまうんです。覚えたいことは寝る前に覚えて、すぐに寝るほうがいいんですね。

安浪:やっぱり睡眠は重要ですね。

枝川:「アメリカ睡眠財団」によると、6~13歳の子で9~11時間の睡眠時間が推奨されています。睡眠には深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)があって、90分の周期で入れ替わっていますから、9時間寝るとすると「90分×6サイクル」ということになりますね。夜10時に寝床に入ったら、朝7時に起きる計算です。

 ただ、必要な睡眠時間は子どもによって違いますし、受験生にはこの時間を確保するのはなかなか難しいかもしれませんね。睡眠サイクルも80分周期だったり、100分周期だったり、必ずしも全員が90分というわけでもありません。ですから見極めとしては、スッキリ起きられたかどうかで判断するのがよいと思います。「昼間十分がんばれた」「今日は頭の回転が速かった」「身体の調子も悪くなかった」との自覚があれば、大丈夫だと思いますよ。

次のページへ朝型か夜型かは遺伝子で決まっている
著者 開く閉じる
AERA編集部
AERA編集部
1 2 3 4