昨年から、一躍脚光を浴びているアーティスト、バンクシー。彼は世界中にメッセージ性のある“落書き”をすることで有名だ。彼の何が世界中の人々を引きつけるのか。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。
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アーティストと聞いて、真っ先に思い浮かべるのは誰だろう。「モナリザ」を描いたレオナルド・ダビンチ? 「叫び」で知られるムンク? それとも水玉のカボチャが有名な草間彌生? そんなアーティストのなかでも、近ごろたびたびニュースをにぎわしているのが、この人。イギリス人のバンクシーだ。
彼のユニークなところは、身分を隠す覆面アーティストを貫いていること。これはバンクシーの経歴と大きく関係があるという。最初に彼を有名にしたのは、「グラフィティ」と呼ばれるアート。日本語にすると「落書き」で、今から50年ほど前、ニューヨークのビルの壁面や電車などストリートに、アーティストたちがカラフルな文字や絵を描いたことから始まった。
グラフィティのアーティストは、許可なし、アポなしで、勝手にストリートをキャンバスにして作品を描くことも多い。日本と同様、世界の国々でもこうした落書きは違法で、バンクシーが監督したドキュメンタリー映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」でも、グラフィティアーティストたちが夜中にビルの屋上などに忍び込んで、見つからないように大急ぎで作品を描いていく様子が紹介されている。
もしも見つかれば、有名アーティストだろうが誰だろうが、即逮捕。どこの誰だかわからないので本人に確かめることもできないが、逮捕されないために覆面アーティストを貫いている可能性は高い。
そんな“落書きアーティスト”だが、彼の作品にはメッセージがこもっているものが多い。
今も紛争が続いている中東のパレスチナ自治区にあるガソリンスタンド横の壁に描かれた、火炎瓶ではなく花束を投げ込もうとする暴徒の絵や、「PARKING」という文字の後ろの「ING」を消して、子どもたちのPARK(公園)にしてしまった絵など、見る人をクスッとさせながら、平和や子どもへの思いがあふれている。
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