■学校を選ぶときは入試問題をみてほしい
「学校の先生は、入試問題にいろいろな思いを込めて作っています。生徒にこういう力をつけてほしいという、学校のアピールでもあるんです」
その例として挙げるのが、栄東の東大特待Iの国語だ。問題文として出されたのは、杉山修一氏の『ここまでわかった自然栽培―農薬と肥料を使わなくても育つしくみ』の本文。専門的な内容で、大人でもてこずりそうだ。後藤さんが調べたところ、1ページ1063字のうち、漢字512字、その他ひらがななどが551字で、ほぼ半分が漢字だったという。
「この文章を、初見で読解できる児童はほぼいないでしょう。ただ、第1問から解き進んでいくと、徐々に理解できるような構成になっているんです。まるで授業を受けているようです」
加えて、後藤さんが最近の入試の傾向として挙げるのが「人間力」だ。たとえば慶応湘南藤沢では国語の問題で、「甘いモノは体に悪いから課税して値段を上げるべきだ」という主張に対して、反論を述べさせた。他者への理解が必要な問いだ。
これからも、こういった傾向は広がりそうだ。
「学校を選ぶときには、パンフレットやホームページを見ることが多いと思いますが、ぜひ入試問題も見てほしい。どういう生徒が欲しいのか、学校からのメッセージがわかると思います」
一方で新タイプ入試も堅調だ。実施する学校は147校と前年よりも3校減ったが、受験者数は17,067人から17,703人と逆に増えている(首都圏模試センター調べ。推定値を含む。新タイプ入試:適性検査型・総合型・思考力型・プレゼン型など含む。英語入試は除く)。選抜方法も適性検査型、自己アピール型、思考力型、総合・合科型などさまざまな方法が導入されている。最近人気なのが自己アピール型入試で、スポーツや習い事、趣味など、小学生時代に打ち込んできたことをプレゼンテーションする。ICT教育の高まりを受けて、プログラミング入試を行う学校も増えている。
首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さんは、新タイプ入試について次のように話す。
「塾に3年間通わなくても自分の好きなことを続けながら、自分の得意分野で受験できる。中学入試の門戸を広げた意義は大きいと思います」
新タイプ入試は、自分の得意なことでトライできるので学校に対してポジティブな気持ちで臨み、行事やクラブ活動などに積極的に取り組む生徒が多いという。
大学が入試改革を進めていくなかで、今後中学入試はどうなっていくのか、注目していきたい。
(柿崎明子)