安倍晋三首相に権力が集中する長期政権が続く。2018年は、その悪影響が従来にも増して国会に表れた一年だった。小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』12月号は「2018年の重大ニュース」を特集。その中で内田晃・朝日新聞論説委員が「1強の害」について解説した。

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 安倍政権では森友・加計学園の問題など、行政府の疑惑や不祥事が後を絶たない。安倍晋三首相は「丁寧に説明している」と繰り返すが、真相の解明には後ろ向きだ。問題の全体像は分からないままで、きちんと責任をとることもしない。

 こんな不誠実な対応がまかり通るのも、行政府をチェックする国会で与党が大多数を占め、首相らに異を唱えず賛成ばかりしているからだ。立法、行政、司法が互いに抑制し、バランスをとる三権分立が、あやうくなっているといっていい。

【1強の害(1)】 公文書をこっそり改ざん <森友学園問題>

 3月、財務省が、森友学園と国有地を取引した際に作った公文書をこっそり改ざんしていたことがわかった。国有地が約8億円も値引きされて森友学園に売却されたことが国会で問題になったが、このとき議員に示された文書は改ざん後のものだった。削除されたのは、安倍首相や妻の昭恵氏などの名前。当時の責任者は証言を拒否し、真相は未解明のままだ。

【1強の害(2)】 首相が友達を優遇? <加計学園問題>

 4月、加計学園による獣医学部新設計画の新文書が愛媛県で見つかった。そこには安倍首相の秘書官(当時)の発言として、「本件は、首相案件」と明記されていた。5月には、学園の理事長が首相と面会したことを記す文書も出てきた。加計学園の理事長は安倍首相の長年の友人で、首相が学園を特別扱いしたのではないかと野党が追及したが、首相は否定している。真相は未解明のままだ。

【1強の害(3)】 不都合な事実が隠された <イラク日報問題>

 4月、防衛省は、国会で過去に防衛大臣が「ない」と回答した自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が見つかったと発表。1前に見つかったが隠していたという。政府は戦闘に巻き込まれる危険がある地域には自衛隊を派遣しないと説明してきたが、日報には「戦闘」や「銃撃戦」の記述があった。文民統制ができていないことの表れで、深刻だ。

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AERA編集部
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