高濱:ホームシックにはならなかった?
香川:中学時代はおばあちゃんが来てくれてました。思春期だったからケンカもよくしたけど(笑)。おばあちゃんからも、たくさんの人に支えられてここにいるんだから感謝しなさいとよく言われました。高校も宮城に残りたいから、学費の高い私立ではなく公立に行かなくては!と、中3の12月頃から必死で勉強しましたよ。とにかくここでサッカーがしたい、ユースに残りたいと。
高濱:ちなみに勉強はできたんですか?
香川:オール2でした。定期テストのときは、徹夜で勉強したんだけどなあ。
高濱:え、体育も2?
香川:あ、体育は4(笑)。だけどサッカーは、そもそもエリートだからプロになれるという世界ではないです。そんなわかりやすいものではない。
高濱:それが、世界に飛び出してみて実感したことなんですね。
香川:欧州は、それまで僕がいた世界とは明らかに違いました。才能もケタ違いだし、タフでバラエティ豊かで強烈な個性の持ち主ばかり。あれは、小さい頃から多様な文化や言語に接してもまれてきた賜物だと思う。僕は小さい頃からプロになりたいと思っていたけど、そのときは世界を舞台にというイメージは描けなかった。Jリーグ、A代表、そのくらい。だから英語も勉強しなかったし(笑い)。でももし小さい頃から世界基準のでっかい夢を持っていたら、成長のプロセスも違っていたのかなと思うんです。だから、今の小学生にはとにかく夢はでっかく持てと言いたいです。能力や環境をベースにこのくらいかな、なんて考えると、そこで成長のプロセスが変わってしまう。子どもだからこそ、でっかい夢を描いて努力しようよ苦労しようよって。
高濱:香川さんが言うから重みがある。
香川:僕が幸運だったのは、節目節目に素晴らしい指導者に会えたこと。でもそれは、夢をあきらめず努力したから出会えたのかもしれない。何かにぶち当たってもそこでメゲずに乗り越えてきたという自負はあります。正直、この4年間は一番しんどかった。思ったように活躍できなかったり、代表に選ばれないこともあって。でもどんなときもあきらめないメンタルがあれば大丈夫。だから僕はこれからも新たな夢をもって新たな苦労をしようと思います。どういう選手になりたいのか、そのために何をすればいいのか。一つひとつ成長したいし求めたい。そうすれば、世界にもいつかきっと勝てると思うんです。勝ったときのうれしさは、もう最高です。だから僕もみんなと一緒に、新たなチャレンジをすするつもりです!
香川真司さん
1989年3月兵庫県神戸市生まれ。幼稚園からサッカーを始め、中学から仙台にサッカー留学後、高校生でのJリーガー、平成生まれ初のA代表を経て、ドイツのボルシア・ドルトムントへ。その後、イギリスのマンチェスター・ユナイテッドを経て、再度ドルトムントへ移籍。2014年ブラジルと2018年ロシアのワールドカップで、日本代表を務める。
高濱正伸
花まる学習会代表。東京大学大学院修士課程修了。塾講師や幼児の野外活動の指導者の経験をもとに、93年に「花まる学習会」を設立。子どもの生き抜く力を重視した教育で幅広く活躍中。
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