しかし、今年2月、スペインのラパシエガ洞窟の壁画が洞窟壁画として世界最古で、約6万5千年前にネアンデルタール人によって描かれたらしいと、ドイツの研究チームが発表。事実だとするとネアンデルタール人は、これまで考えられてきた以上に知的だったことになる。

 ホモ・サピエンスはネアンデルタール人と結婚して、子どもをのこしていたこともわかっている。ネアンデルタール人の骨の化石からDNAを取り出し、現代人と比べたところ、アフリカ系以外の人は、ネアンデルタール人の遺伝子の1~4%を受け継いでいることがわかった。

 また、5万年前ごろには、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人のほかに、少なくとも2種の人類がいたようだ。

 一つは「フローレス原人」。2003年にインドネシアのフローレス島で発見された化石から存在が明らかになった小型の人類で、身長は1メートルほど。体も脳も小さいが、精巧な石器や火を使っていた。

 もう一つは「デニソワ人」。08年、ロシア南部のデニソワ洞窟から、子どもの骨の一部と大人の歯の化石が見つかり、取り出したDNAから未発見の人類であることがわかった。彼らはネアンデルタール人に近いともいわれ、その後の研究から、ホモ・サピエンスは、デニソワ人とも結婚して子どもをのこしていたことがわかっている。

 このほかにも未解明の人骨化石が中国などで見つかっている。研究が進めば驚くような新事実が見つかるかもしれない。(上浪春海)

【約5万年前、地球にいた人類】
4種以上の人類がいたことが、最近の研究でわかっている。現在、地球にいる人類はすべて「ホモ・サピエンス」

(1)ホモ・サピエンス(新人)
約30万~20万年前にアフリカで誕生し、世界各地に広がった。約4万5千~1万5千年前にヨーロッパや北アフリカに分布していたグループは「クロマニョン人」と呼ばれる。洞窟に壁画を描くなど芸術活動を行っていた。

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