米倉涼子(よねくら・りょうこ)/1975年、神奈川県出身。99年、俳優デビュー。テレビ朝日系ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」、ブロードウェイミュージカル「CHICAGO」など、様々な作品で主演を務める(撮影/写真映像部・東川哲也)
米倉涼子(よねくら・りょうこ)/1975年、神奈川県出身。99年、俳優デビュー。テレビ朝日系ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」、ブロードウェイミュージカル「CHICAGO」など、様々な作品で主演を務める(撮影/写真映像部・東川哲也)

 Amazon Originalドラマ「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」が3月17日から世界同時配信される。米倉涼子が演じるのは、海外で亡くなった人の遺体を母国の遺族のもとに届ける、実在する人物をモデルにした女性だ。AERA 2023年3月20日号より紹介する。

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──ドラマの原作は、佐々涼子の同名のノンフィクション。偶然にも、米倉涼子は10年ほど前に知人に薦められて原作を読み、「こうした役を演じてみたい」と感じていた。

米倉:原作は、一気読みでした。「死」をテーマに扱っているので悲しい話ではありますが、それ以上にエネルギッシュで、「悲しい」を超え「ありがとう」と思える結末になっていることに感銘を受け、「この本の存在を伝えたい」と強く感じたことを覚えています。近しい人々に読んでもらおうと、自分で何冊も本を買い込み、配っていました。そんなこと、滅多にないのですけれど。なので、約10年の時を経て役のオファーを頂いた時は、本当に驚きました。

──米倉演じる国際霊柩送還士の那美は、遺体を遺族のもとに送り届けると同時に、家族が知ることもなかった故人の生き様を伝える役割も担う。作品を観ると、「世の中には、こうした仕事があるのだ」と思わずにはいられない。

■「死」を背負う仕事

米倉:国際霊柩送還士という仕事の必要性は想像をすれば理解できますし、「海外に出ている時に事故にあったり、思いがけない出来事に直面したりしたらどうしよう」と考えたことはありましたが、そんな事態になった時に誰が助けてくれるのだろう、というところまでは自分の発想が届いていなかったのが正直なところです。

 実際に携わっている方々に話を聞いて感じたのは、「死」を扱いながらも、もっと深い部分、寂しさや悲しさといったものをすべて引っくるめて背負い、ご遺族がそれを乗り越えていくのを見届けるためにある仕事なのかな、ということでした。那美のセリフに「死を扱うということは、生を扱うということ」という言葉があります。死に化粧をして送り出すだけでなく、亡くなった方の周りにはどんな人々がいて、どのような日々があったのか。悲しみではなく、その人が生きていた証しとして、存在を思い返し、なるべく良い思い出にして返す。

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