中国からの入国者に義務づけられた抗原検査の列に並ぶ旅客=2022年12月30日、成田空港
中国からの入国者に義務づけられた抗原検査の列に並ぶ旅客=2022年12月30日、成田空港

 一人の感染者も見逃さないように張りめぐらされた対策がなくなり、感染者が激増した。各地で火葬場がフル稼働し、コロナ関連の死者も増え続けていることを市民は感じ取っていた。

 しかし、中国政府の統計上に変化は表れなかった。対策の緩和後も、1日あたりの死者はゼロから数人とされた。コロナ感染後の基礎疾患の悪化が主な死因の場合、死者数に含めない独自の狭い基準をもとにした集計だった。

■少なすぎる死者

 中国疾病予防コントロールセンターは1月9日を最後に、毎日公表していた新規感染者数と死者数の情報更新を止めた。実態の不透明さがさらに増したが、中国外務省の報道官は「中国は公開、透明の原則のもと、各方面と情報を共有している」という主張を繰り返した。

 死者がこんなに少ないはずがない。実態とかけ離れている──。そんな声をあげたのは、中国の市民だけではなかった。世界保健機関(WHO)から「死者数が過少に報告されている」と指摘されるなど国際社会から情報開示のあり方を批判された。

 中国の衛生当局は1月14日、昨年12月8日~1月12日に医療機関で亡くなったコロナ関連の死者数が5万9938人だったと明らかにした。コロナに起因する呼吸不全による死者が5503人、基礎疾患との合併症による死者が5万4435人との内訳も示した。国際社会からの批判も考慮し、当局はそれまでの姿勢を変えてデータを公表したようだ。(朝日新聞瀋陽支局長・金順姫)

AERA 2023年2月13日号より抜粋