哲学者 内田樹
哲学者 内田樹

 哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。

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 毎日新聞が8月20~21日に行った世論調査では、岸田内閣の支持率は前回の52%から16ポイント下落して36%、内閣成立後最低を記録した。不支持率は54%で17ポイント増加。理由は明らかだろう。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党の癒着という「現代政治史の闇」を解明する気がないという腰の引けた姿勢に有権者たちがつよい不信の念を抱いたからである。同じ世論調査で、政治家は旧統一教会との関係を断つべきかという問いに「関係を断つべき」が86%。自民党支持層でさえ77%に達した。

 内閣改造後に支持率が急落するというのはふつう起きない。ふつう起きないことが起きたのは、旧統一教会との癒着が疑われる議員たちを内閣に大量登用したこと、とりわけ旧統一教会との深い関係が暴露された萩生田光一氏を党政調会長という要職に起用したことが原因である。

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内田樹

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内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

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