1980年代に社会問題化した旧統一教会による「霊感商法」。当時メディアはこの問題をどう報じたか。AERA 2022年9月5日号の記事から紹介する。
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ワイドショーや新聞、週刊誌では、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)にまつわる問題が連日報じられ、政治家との関係や「霊感商法」の実態が次々に明らかになっている。だが、これらの問題は急に浮上したわけではない。
「親泣かせの『原理運動』」
朝日新聞夕刊にそんな見出しが躍ったのは、1967年7月7日。旧統一教会の関連団体「全国大学原理研究会」による原理運動が全国の大学や高校に広まり、学業放棄や家出をする学生が相次いでいること。大学の授業料などを原理研究会につぎ込み、大金を巻き上げられているということ。親の悲痛な叫びとともに、その実態が報じられた。
親子問題として始まった原理研をめぐる動きは、やがて大学を巻き込む問題に発展。さらに80年代には印鑑や壺(つぼ)などを高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題となり、旧統一教会への関心は高まりをみせる。
■「かたい信者」取り込む
霊感商法問題の先駆けとなったのが、週刊誌「朝日ジャーナル」が86年に始めた追及キャンペーンだ。同誌は、12月5日号で「豊田商事をしのぐ冷血の手口 霊感商法の巨大な被害」とのタイトルで記事を掲載。その後、およそ1年間で10回にわたって報じ続けた。
翌87年には、霊感商法問題がさらに大きく動き始める。新聞やテレビなどでも霊感商法を追及する報道が増加し、「霊感商法被害救済担当弁護士連絡会」(被害弁連)が結成。国会でも、「不安につけこむ商法」として問題視されるようになる。
すると、旧統一教会の動きにも変化が起きた。
「原理運動で人を、霊感商法で金を収奪する時期を経て、『内向』の時代に入ります。弁護士やメディアに相談しないような、『かたい信者』にしてから高額献金させるようになりました」
そう振り返るのは、当時朝日ジャーナル編集部で霊感商法問題の取材班の一人だった藤森研さん。以来、旧統一教会は、今に至るまで主に「かたい信者」から高額献金・献財をさせる内向の時代が続いているという。