近年、ジャニーズ事務所所属の中山優馬は俳優業を軸に活動している。中でも主戦場としているのが舞台だという。最新主演作では1970~80年代という激動の時代にのみ込まれながらも、理想の音楽と愛を追い求める不器用なバンドマンを演じる。AERA 2021年9月27日号では、日々の演技に向き合う中山優馬を取材した。

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——最新主演舞台「ザ・パンデモニアム・ロック・ショー」は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する昭和の音楽業界を舞台に、夢や恋に揺れ動くバンドマンたちの生き様を描いた物語。作・作詞・楽曲プロデュースに森雪之丞、演出に河原雅彦、音楽には亀田誠治というビッグネームが名を連ねる、ノスタルジックな音楽と熱気があふれる“ロックオペラ”だ。

 中山は本作への出演オファーに二つ返事で「ぜひ」と答えたものの、「タイトルの意味は正直よくわからなかった」と笑う。

 パンデモニアム=伏魔殿らしいんですけど、そう聞いてもまだピンとこなくて(笑)。でも、台本の中に「悪事や陰謀に張り巡らされた、この世界の比喩」という台詞(せりふ)があって、そこでようやく理解できました。雪之丞さん自身の青春時代が盛り込まれた自叙伝的な内容なんですけど、裏切りや嫉妬など、もうやりたい放題なんです(笑)。

■昭和ってアナーキー

——物語は1966年、ザ・ビートルズの来日から始まる。中学生だった楠瀬涼(中山)はロックと出合い、やがて仲間とともにバンドを結成する。青春を謳歌(おうか)し、夢を追い求めていくが、80年にジョン・レノンが射殺されたことを契機に、悪夢と現実のはざまをさまよい始める。

 稽古していて、昭和の時代って魅力的だなあと改めて思いました。今みたいにスマホでなんでも調べられる時代じゃないから、例えばギターの練習一つとってもそれなりの労力が必要になる。だからその分、情熱がすごいんですよ。あと、どこでもたばこを吸っていたりとか、「昭和って、なんてアナーキーな世界なんだろう!」って(笑)。

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