投手板から本塁への距離が31センチ延びることで、大リーグで進んでいる「本塁打か三振か」という大味な野球が変わるかもしれない (c)朝日新聞社
投手板から本塁への距離が31センチ延びることで、大リーグで進んでいる「本塁打か三振か」という大味な野球が変わるかもしれない (c)朝日新聞社

 三振数を減らすため、米独立リーグでバッテリー間の距離が31センチ延びる。大リーグや日本でも導入される可能性があり、選手らから不安の声も漏れる。AERA 2021年5月24日号から。

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 大リーグと提携する米独立リーグ「アトランティック・リーグ」が今シーズン(5月27日~10月10日)、二つの新ルールを導入することで話題を呼んでいる。一つ目が先発投手の降板時に指名打者(DH)を解除する「ダブルフックDH制」。もう一つが、バッテリー間の距離を現在の18.44メートルから31センチ延ばして18.75メートルに変更する試みだ。

■不満は試合時間の長さ

 大リーグ公式サイトによると、ダブルフックDH制は先発投手が交代したところでDH制が自動的に解除され、DHの打順に投手が入る。投手が初回から打ち込まれて交代した場合、指名打者でスタメン出場した選手は1打席も立たずに交代する可能性がある。先発投手に長いイニングを投げさせるのが大きな狙いで、DHがない状況での選手交代など采配による両球団の駆け引きも楽しめる。このルールは開幕戦から導入される。

 米国駐在の通信員は、こう分析する。

「この制度は以前から話題に上っていました。野球ファンの中で最も不満なのは試合時間の長さです。救援投手を使えば使うほど試合時間が間延びする。ダブルフックDH制が導入されれば、先発投手が乱調でも簡単には代えられない。個人的にはおもしろいと思います」

 一方、野球界の常識を覆すことになりそうなのが、投手板から本塁への距離を延ばすことだ。1893年から18.44メートルで統一されてきた。128年ぶりの変更となる。

 大リーグの選手は1893年と比較すると、食生活の改善やトレーニングの進化で肉体の大型化が進み、球速160キロを超える投手が急増している。こうした理由も一因となって15年連続で三振率が増加している。そこで投手板を31センチ後ろにずらし、バットに当たる確率を上げて試合をスリリングにするのが狙いだ。シーズン後半戦から導入される。

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