岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)
AERA 2021年4月26日号より
AERA 2021年4月26日号より

 新型コロナウイルスの第4波が到来。ワクチン接種は他国に比べて遅く、死者数の増加も懸念される。そうした中、日本感染症専門医の岩田健太郎医師が、いま必要な対策を語った。AERA 2021年4月26日号から。

【図】マスク生活で陥りがち!気を付けたい12項目はこちら!

※【岩田健太郎医師が日本のコロナ対策に苦言 「第4波は来るべくして来た」】より続く

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 米国のファウチ大統領首席医療顧問は、ワクチンの普及によってコロナを麻疹などのような「流行しない病気」にしたいと言っています。実質上、感染ゼロを目指しているのです。英国も効果的なワクチン提供とロックダウンを組み合わせてコロナゼロが具体的な目標と言えるレベルになってきました(本稿時点)。両国は目標達成までの道筋も具体的に説明しています。

 日本は、目標が明確になっていないだけでなく、感染対策に欠かせない手段である検査や医療、ワクチンの確保もできていません。神戸市には今、入院できずに自宅で待機中の感染者が何百人もいます。1年前から同じことの繰り返しです。

――岩田医師は日本も「感染ゼロを目指すべき」と考えている。

 なぜなら、日本で1万人近く、世界では約300万人が命を落としている、危険なウイルスだからです。

 ワクチン接種が他国に比べて遅い日本で、具体的にどうコロナに対峙していけばいいのか。

 全国一斉に感染ゼロを目指すのではなく、都道府県単位で「感染ゼロ」の地域を増やしていけば、日本でも感染ゼロを達成できると考えています。

 最初は強い対策が必要です。都道府県境をまたぐ移動をいったんは制限します。都道府県境を越えて移動する人には、PCR検査を義務付けるのもいいかもしれません。PCR検査は、潜伏期間中は陽性と出ないことがあり、すり抜けが必ず出ますが、「PCR検査を受けなければならない」ということで、不要不急の遠出の抑制になります。

 都道府県単位での感染ゼロは、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が少ない島根県や高知県では、外部から人が流入しなければ、比較的早い段階で達成できるのではないか。

 感染ゼロの状態が一定期間続いた自治体では、会食やイベントなどの開催を順次、解禁していきます。そして、感染ゼロの自治体同士に限って往来も解禁します。こうやって段階を踏んでいけば、いずれ全国で感染ゼロを達成できるはずです。

(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年4月26日号より抜粋