「公私混同は絶対に許さない両親でした」(石破氏)

 翻って、菅義偉首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」が繰り返し総務官僚を接待していた問題はどう考えればよいだろうか。首相は、こうした逸話をどう受け止めるだろうか。2月24日に行われた幹部らの処分で幕引きを図りたいところだろうが、単なる国家公務員倫理規程違反を超えた闇の深さがそこにありそうだ。

 元参議院議長の江田五月氏は、その闇深さを明快に指摘してくれた。

「公正さというものは、実質が公正であることはもちろん必要なのですが、それは歴史の審判を待たなければならないことが多々あります。ですから、今そこにある公正『らしさ』も、同時にとても大切にしなければならないのです」

 今回、実際に行政がゆがんだかどうかはなお取材が必要だが、利害関係者の会食はもちろん、菅首相の威光をどう利用したかなど、公正「らしさ」がないがしろにされているのは確かだろう。

■「家族の問題」で疑惑に

 父は日本社会党書記長を務めた国会議員だった江田氏。自身も裁判官から衆参の国会議員となり、「三権の長」の一つ、参院議長も務め、「権力」や「公正」には神経をとがらせてきた。この間、知人から公正さそのものがゆがめられる依頼を受けたこともあったが、その都度、拒絶してきたという。今回の菅親子の問題を受けて、あらためてこう思う。

「権力の恐ろしさを知らない人間が権力を振るうことほど恐ろしいことはありません」(江田氏)

 菅親子がどこまで考えて行動したのか、あるいはしなかったのかは分からないが、評論家の塩田潮氏は今回のような疑惑に、特殊な事情を感じる。著書『辞める首相 辞めない首相』(日本経済新聞出版)で、1972年に首相に就いた田中角栄氏以降の日本の総理大臣がどのような辞め方をしているかについてつぶさに検討を加えた塩田氏は、こう指摘する。

「総理大臣が家族の問題で疑惑を指摘されて、それが進退に及ぶかもしれないという形にまで発展したのは、私が調べた田中元首相以降では、最近の安倍(晋三)前首相と菅首相の2人だけではないでしょうか」

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