宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗する新型宇宙船が、打ち上げ延期を経ていよいよ、日本時間の11月15日に打ち上げられる予定だ。今回で3回目の宇宙挑戦となる野口さん。今回はコロナ禍のなか訓練も特別なものだったようだ。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」11月号の記事を紹介する。

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 野口聡一飛行士(55)が搭乗する新型宇宙船が、日本時間の11月15日に打ち上げられる予定だ。野口さんは国際宇宙ステーション(ISS)に半年間滞在し、超小型衛星の放出や遺伝子研究にも携わる予定となっている。新型宇宙船への搭乗は日本人初となり、野口さんは2005年と09~10年に続く3回目の宇宙に挑戦する。

 野口さんが乗る新型宇宙船は、アメリカの宇宙ベンチャー企業・スペースX社の「クルードラゴン」だ。ISSへ向かう民間初の有人宇宙船で、20年5月には2人の飛行士を乗せて試験飛行し、8月に地球へ帰還した。今回の打ち上げが本格運用の1回目となる。

 クルードラゴンは、フロリダ州(アメリカ)のケネディ宇宙センターからファルコン9ロケットで打ち上げられ、野口さんのほかに3人の飛行士も一緒に乗り込む。21年春に打ち上げ予定の次のクルードラゴンには星出彰彦飛行士(51)が搭乗し、ISSで船長を務める。

 野口さんは直前まで、テキサス州(アメリカ)ヒューストンで訓練していた。船外活動の予定もあるため、無重力空間を模した巨大プールや設備を使って、ボルトや配管の取り付けをしたり、船外活動用の作業服の操作法を学んだりした。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、訓練も在宅だったり少人数に絞られたりした。ISSでの作業内容をオンラインで確認し、ロボットアームの操作もインストラクターと2m以上離れて訓練したという。

 野口さんは、クルードラゴンでは操縦はしないが、酸素や温度といった船内環境の制御のほか、地上の管制センターとの通信などを担当する。搭乗する宇宙船の名前は「レジリエンス(回復力)」に決まった。野口さんは「宇宙への挑戦をやめないという姿を伝え、今のコロナの現状から立ち直る力を、身をもって示したい」と意気込んでいる。

【国際宇宙ステーション(ISS)】
地上約400キロメートルの宇宙空間に建設された巨大な有人実験施設で、大きさはサッカー場ほど。1998年に建設が始まり、2000年から宇宙飛行士が滞在を始めた。1周約90分というスピードで地球の周りを回りながら、実験や天体の観測を行っている。日本の実験棟「きぼう」も取り付けられている。

(朝日新聞科学医療部・小川詩織)

※月刊ジュニアエラ 2020年11月号より

ジュニアエラ 2020年 11 月号 [雑誌]

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小川詩織
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