ワシントンで、トランプ氏が指名した最高裁判事候補を支持するトランプ派(右)と反対派が対立。選挙前後、こうしたことが増えるのか(撮影/大和田三保子)
ワシントンで、トランプ氏が指名した最高裁判事候補を支持するトランプ派(右)と反対派が対立。選挙前後、こうしたことが増えるのか(撮影/大和田三保子)
ワシントンの路上に座り込んだ反トランプ派が警官に退去を迫られる。民兵に対する自警団を形成する動きもある(撮影/大和田三保子)
ワシントンの路上に座り込んだ反トランプ派が警官に退去を迫られる。民兵に対する自警団を形成する動きもある(撮影/大和田三保子)

 新型コロナウイルスが野火のごとく広がる中で迎える大統領選投開票日。武装した「民兵」が投票所を「監視」すると称し、市民の不安を煽っている。AERA 2020年11月2日号では、混乱の様相を呈する米大統領選を取り上げた。

【写真】ワシントンの路上に座り込んだ反トランプ派が警官に退去を迫られる

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「全員、投獄しよう!」

 とトランプ大統領。10月17日、ミシガン州で開いた選挙集会で、グレッチェン・ホイットマー同州知事(民主党)について「(新型コロナのために知事が閉鎖している)経済や学校を再開させるべきだ」と主張。これに支持者らが「彼女を投獄せよ!」と叫んだのに応じた。

 ホイットマー知事は、「まさにこれが私、家族、他の政治家の命を危険に晒(さら)しているレトリックだ」と即座にツイートでトランプ氏を糾弾した。

■武装グループが活発化

 同知事は10月初旬、米連邦捜査局(FBI)が逮捕した武装グループが拉致・殺害する企(たくら)み、つまり「国内テロ」のターゲットだったことが分かったばかり。これで13人ものメンバーが逮捕された。

 また、トランプ氏は選挙を巡り「不正が起きる」と繰り返し主張している。米市民はにわかに、「投票を監視する」として投票所付近に銃器で武装した「民兵」が現れることを懸念し始めた。

 危機を予測・分析する「武装衝突の場所・イベント・データプロジェクト(ACLED)」によると、投開票日前後に「民兵」によるデモや暴力行為などで最も高いリスクにさらされるのは、中西部のミシガン、ウィスコンシン、北東部ペンシルベニア、南部ジョージア、西部オレゴン州の5州と報告した。ACLEDは、各州にある民兵グループのリクルートや訓練の状況、またミシガン州のように経済閉鎖に対する反感の高さなどを調査した。大統領選が進むにつれて、極右の武装グループのメンバーが増え、活動も活発化していると指摘する。

 極右が一致団結しているのは「選挙で(左派による)不正があれば、トランプ氏が敗北してしまう」という共通の懸念によるものだ。極右民兵運動を追跡するミリシアウォッチ創業者、ハンプトン・ストール氏は米公共ラジオ(NPR)に、こう語った。

「投票所で左派が介入するという噂が出回っている。それが、武装した個人や民兵グループを投票所に向かわせている」

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