(1)結婚の時期


 遅過ぎずできれば良いと考えております。

(2)理想の男性像
 以前もお答えしていますが、一緒にいて落ち着ける方が良いと考えております。

(3)お相手の存在
 このような事柄に関する質問は、今後も含めお答えするつもりはございません。

■ご自身が住みたい社会

 丁寧かつ必要十分な回答だ。少し解説するなら、(2)の「以前もお答えしています」は前出の14年の会見のこと。その時も「一緒にいて落ち着ける方がいいと思っております」とほぼ同じ答えだから、何回聞かれてもこれしか答えないという佳子さまの意思表明だろう。(3)は、もっとすごい。私なりに翻訳させていただくなら、「未来永劫(えいごう)、答えません」。公開するプライバシーの線引きだと思う。

 思い出したのが、上皇陛下(86)の長女である紀宮さま(51、現・黒田清子さん)だ。90年、21歳の誕生日を前に初の記者会見をし、結婚について聞かれて以来、ずっと聞かれ続けた。その都度、紀宮さまは根気強く答えたが、27歳の時に「これからは答えを控えたい」と述べた。が、その後も事態は変わらず、質問から「結婚」の文字が消えたのは、31歳の誕生日会見だった。

 その頃と比べれば、「個人情報」への考えは大きく変わった。とはいえ、国民が女性皇族に寄せる「好奇心」はさほど変わっていないだろう。だからこそ佳子さまの回答に感動する。強さあってのもの、「次男の次女」のなせる技。そう思う。

 ところで、とうとう「立皇嗣の礼」が11月8日と決まった。安倍政権は「一連のお代替わりの儀式が終わるまで」として、「女性宮家」や安定的皇位継承の検討をずっと先延ばしにしてきた。「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が付帯決議でこれを求めてから3年。これで儀式は一区切りだ。

 佳子さまは、10月10日、日本でのガールスカウト運動100周年を記念する「国際ガールズメッセ」のプレイベントへのメッセージで「誰もが人生の選択肢を増やすことができ、自らの可能性を最大限にいかしていける社会」を願っていた。きっと、ご自身が住みたい社会に違いない。佳子さまの言葉が、菅首相に伝わることを願っている。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年10月26日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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