ベネチア銀獅子賞の黒沢清監督「まだまだ捨てたもんじゃない」 日本映画に見出した希望

2020/10/02 11:30

高橋:「気持ちで演じる」のはあまり好きではないんです。それに、できればテクニカルなことは本番に入る前に捨てたい。「スパイの妻」は口語体のようで、ある意味クラシックなセリフ回し。心情を乗せてリアルに演じようとしても、そもそもリアルではありません。自分の中で腑に落ちているかどうかは気にして、納得できない時は修正を入れるようにしていました。

■日本映画の力感じた

黒沢:高橋さんと蒼井さんに最初にお会いした時に、脚本から想像するあるニュアンスを感じてもらえるかなと思いまして、「わかりますか?」とおずおずと聞いたと思います。お二人が「わかります」とおっしゃってくれたので、「もう大丈夫だ」と安心しました。お二人は基礎教養というか、映画の歴史みたいなものがベースにあるのですごくやりやすかったです。

高橋:僕の場合、セットの作り込みのすごさに影響されます。例えば、時代劇のセットにカツラをかぶって入ると、所作が身についていれば自然とそれが出てきます。背景など目から入ってくる情報や、肌で感じる感覚が芝居に影響する。今回もやるべきことは詰め込むだけ詰め込んで、その後は肉体がどう反応していくかを楽しんでいました。

黒沢:高橋さんは撮影の2日目にして、満州での経験を語る何ページにもわたる長いセリフがあったでしょう。聡子役の蒼井さんにも観客にも、「そんなことがあったのか」と思ってもらえるよう書かれた恐ろしく長いセリフです。僕はこの作品はここを乗り切りさえすれば、あとはうまくいくだろうと思っていたんですが、その通りでした。

高橋:ダイアローグのようであってモノローグでした。そんなセリフには読んだ時にすごく入ってきて、言いたくなる力があるんです。監督はシーンを一連で撮っていくスタイルで、その中で抽出される面白そうなものを柔軟に取り入れていく。探りながらも迷わずやるべきことを決めてくださるので、動きながらあのセリフを伝えていくことが楽しかったんです。エキサイティングな2日間でした(笑)。

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