スフィアン・スティーヴンス(写真提供:ビッグナッシング)
スフィアン・スティーヴンス(写真提供:ビッグナッシング)
ニュー・アルバム『ジ・アセンション』のジャケット(写真提供:ビッグナッシング)
ニュー・アルバム『ジ・アセンション』のジャケット(写真提供:ビッグナッシング)

 ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンといったベテランのみならず、現在の北米では様々な世代の個性的なシンガー・ソングライターの活躍が目立つ。新型コロナウイルス感染症の影響や、11月に大統領選を控えていることもあり、よりダイレクトに“個の声”が求められるようだ。そうした状況から、言葉や行動に明確な主張を持つ自作自演のソロ・アーティストの作品が何かと注目されやすい。

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 そんな中、現代アメリカを代表するシンガー・ソングライターといってもいいスフィアン・スティーヴンスが約5年半ぶりのニュー・アルバム『ジ・アセンション』を発表した。9月25日にまずデジタルでリリースされたが、10月2日には日本も含め世界規模でCDなどが発売される。

 スフィアン・スティーヴンスといってピンとこない人も、2017年に公開された映画「君の名前で僕を呼んで」の主題歌「ミステリー・オブ・ラブ」を歌っていた、ささやくように繊細な声の持ち主……と聞けば思い出す人もいるかもしれない。その曲は第90回アカデミー賞(18年)歌曲賞にノミネートされた。数々のスターが客席に並ぶ華やかなショーの場で、少し居心地悪そうに「ミステリー・オブ・ラブ」を披露した姿は、今も目に焼きついている。

 スフィアンは00年のデビュー・アルバムから今に至るまでの約20年、一貫してインディー・レーベル、それも自らが運営に関わるプライベートなレーベルから作品を出し続けている。メディアでの高い評価のみならず、ジャンルや世代を超えたメジャー級のアーティストたちからもラブコールを送られながら、そのたたずまいはどこまでも物静かで奥ゆかしい。芸能的なフィールドからは一線を引いている。

 1975年ミシガン州生まれ、ギリシャ系で現在45歳。新作『ジ・アセンション』は、時代と対峙(たいじ)してきた彼が、デタラメだらけの社会を問いただし、自分の立ち位置を明確にしようとした提言のようなアルバムだ。

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岡村詩野

岡村詩野

岡村詩野(おかむら・しの)/1967年、東京都生まれ。音楽評論家。音楽メディア『TURN』編集長/プロデューサー。「ミュージック・マガジン」「VOGUE NIPPON」など多数のメディアで執筆中。京都精華大学非常勤講師、ラジオ番組「Imaginary Line」(FM京都)パーソナリティー、音楽ライター講座(オトトイの学校)講師も務める

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