姜尚中「日米安全保障条約60年の節目に一本足打法からの脱却を検討すべきだ」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

姜尚中「日米安全保障条約60年の節目に一本足打法からの脱却を検討すべきだ」

連載「eyes 姜尚中」

このエントリーをはてなブックマークに追加
姜尚中AERA#姜尚中
姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

(c)朝日新聞社

(c)朝日新聞社

 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

*  *  *
 日米安全保障条約が改定から60年を迎えました。そこで改めて安保条約の何が問題で何が足りないのかということを考えてみたいと思います。日米安保を国家の不動の軸芯とみなすにしても、60年も経てば明暗は表裏のごとく、日の当たる所には影がさすものです。

 そもそも1960年の安保改定は、旧条約は単なる米軍の駐留規定で占領時代の延長と変わりなくあまりに不平等というので、対等で双務的な同盟関係の構築が掲げられました。それに対し、米国からは再軍備と兵力の拡大、憲法改正による海外派兵の可能性が課題として突きつけられたのです。

 岸信介元首相のもとで強行された安保改定ですが、形の上では対等な同盟関係がうたわれていても、彼我の軍事力の差は圧倒的で、双務的な同盟と言われてもそれがフィクションであることは明らかです。フィクションと分かっていながら敢えて対等かつ双務的な同盟関係という「顕教」を押し出してきたのは、両国にとってメリットがあったからです。しかし、改定から60年が過ぎ、国際関係の構造も大きく変わり、日本の国力も当時とは比べようもないほど大きくなりました。

 また日本を取り巻く環境もドラスティックに変化しています。日本の最大の貿易国は中国であり、米国国債を一番保有している国は日本です。トランプ大統領が日米安保を「不公平だ」と不満を口にし、武器購入や米軍基地の経費負担の増額を迫っている今、日米同盟という一本足打法だけに頼ることには限界があります。それを補うもう一つの軸芯として必要とされているのが、多国間主義の積極的な唱導です。現に日本はTPP(環太平洋経済連携協定)で主導的役割を果たしているはずです。それを安全保障や外交の面にまで拡張していくことが必要とされています。具体的には六カ国協議を北朝鮮の核問題解決の多国間枠組みとするとともに、それを将来の北東アジアの多国間安全保障にまで展開できるよう尽力することです。

 外交や安全保障で一本足打法に頼り続けることは日本の選択肢をますます狭めてしまいかねません。この視点から安保改定60年を考えてみるべきです。

AERA 2020年2月10日号


トップにもどる AERA記事一覧

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい