全社員を対象にしたアンケート方式の意識調査を実施したことも紹介し、自信満々にこう語った。

「アンケートで本音を語っていただき、不祥事の防止につなげている」

「会社に理解がある。不正をする機会を与えず、意識付けでやらせない風土をつくりあげることが重要」

 だがその翌日。新聞各紙は、八嶋氏ら関電の監査役についてこう報じた。

「関電監査役会、昨秋に把握 金品受領、監視機能働かず」

 幹部が金品を受け取っている事実を知っていたにもかかわらず、問題視しなかったというのだ。日本監査役協会幹部はあぜんとした様子でこう語った。

「知っていてパネリストに出てきたなんて、信じられない」

お菓子の底に小判。札束。そして金の延べ棒。

「お主も悪よのう、ぐっふっふ」

 時代劇のそんなセリフが聞こえてきそうなほど時代錯誤な金品受領に負けず劣らずの批判を集めているのが、不祥事発覚を受けた関電の対応だ。

 一部報道を受け、岩根社長は9月27日に初めて記者会見に応じ、20人が3億2千万円分の金品を受け取っていたことを認めた。ただ会見中、一度も騒動の核心人物である森山氏の名前を出さず、「特定の人物」で通した。受け取った金品や時期、状況についても一切、口を閉ざした。社内処分をしたことは認めたが、その内容も伏せた。

 だが、世間が納得しなかった。5日後の10月2日の会見では、「前回は個人情報に配慮した内容で、しっかりとお伝えできず疑念や不安を与えた。大変、反省している。本日は報告書の内容を含めて、可能な限り、詳細に説明したいと思っております」。

 会見場には2018年9月11日付の社内報告書も配布されていた。報告書には、森山氏が急に激高し「無礼者」「わしにはむかうのか」などと長時間にわたり叱責・罵倒することが数多くあったとしるされていた。「うつ病になった、左遷されたとの話が伝えられ……」と伝聞も交えながら、金品受領の主因は森山氏側の強固な姿勢にあったことを指摘した。岩根社長は「森山氏に関する問題では、長年にわたって、各人が我慢を重ねて対応してきたものであり、各人でなんとか対応していくしかないという引き継ぎ、助言を受けていた」と語った。

 関電は、森山氏の横暴ぶりを明らかにすることを強調することで、世間の理解を得ようとしている、と記者たちは感じ取った。テレビ局の記者からは「森山氏という特異なキャラクターのもとで、まるで関電が被害を受けたような印象だ。そんな対応でいいのか」との質問も出た。実際、翌日の新聞の朝刊は「言い訳に終始」「被害者の立場を強調」といった論調だった。(朝日新聞経済部・加藤裕則)

AERA 2019年10月21日号より抜粋