愛媛県立長浜高校「水族館部」の生徒が、静岡市の化粧品会社「エイビイエス」と共同でクラゲよけクリームを開発。今年4月末に商品化した。どのようにして生まれたのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』9月号に掲載された記事を紹介する。

「自分たちの研究が製品となって、役立つことがうれしい」と語る研究班の河原羽夢さん。より効果の高いクリームを開発中。「ジェリーズガード」はサーフィンやダイビング用品店で販売されている(撮影/上浪春海)
「自分たちの研究が製品となって、役立つことがうれしい」と語る研究班の河原羽夢さん。より効果の高いクリームを開発中。「ジェリーズガード」はサーフィンやダイビング用品店で販売されている(撮影/上浪春海)

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 研究の始まりは5年前にさかのぼる。2014年当時、長浜高校の1年生で、水族館部の研究班にいた重松夏帆さんと山本美歩さんが、ハタゴイソギンチャクを隠れ家にしているカクレクマノミを観察するなかで、クマノミはなぜイソギンチャクの毒針に刺されないのか、疑問に思ったのがきっかけだった。

 二人は、海水に含まれている物質が関係しているのでは?と仮説を立て、海水に多く含まれるマグネシウムとカルシウムの濃度(濃さ)を変えた液体にイソギンチャクを入れる実験を繰り返した。その結果、マグネシウムの濃度が海水より低いときだけ、触手の表面にある毒針が飛び出すことがわかった。調べてみると、カクレクマノミの体表を覆う粘液のマグネシウム濃度は海水より濃く、触れてもイソギンチャクの毒針を飛び出させるスイッチが入らないことがわかった。この研究成果は、14年度の日本学生科学賞・高校の部で最高の内閣総理大臣賞を受賞した。

 二人は同じ刺胞動物のクラゲの場合も、触手のまわりのマグネシウムの濃度が高いと毒針を出すスイッチが入らないことを明らかにし、「この研究を応用すれば、クラゲに刺されるのを防ぐクリームが作れるかもしれない」と考えた。

 この研究成果とアイデアを受け継いだ水族館部の後輩、重松楽々さんたちは、商品化に向けた研究を重ねて「クラゲ予防クリームの開発」という提案書を作成。17年度の高校生ビジネスプラン・グランプリに応募して、みごと準グランプリを受賞した。これをきっかけに化粧品会社との共同開発に拍車がかかり、今年4月、クラゲよけクリームが「ジェリーズガード」という名前で商品化された。

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AERA編集部
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NEXTより効果の高いクリームを研究開発するために…
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