FB副社長のモニカ・ビッカート。「白人至上主義をヘイトグループの定義に含めると発表した」と強調した (c)朝日新聞社
FB副社長のモニカ・ビッカート。「白人至上主義をヘイトグループの定義に含めると発表した」と強調した (c)朝日新聞社
テロ事件や過激派組織とフェイスブック(AERA 2019年6月3日号より)
テロ事件や過激派組織とフェイスブック(AERA 2019年6月3日号より)

 米フェイスブックが、暴力コンテンツやヘイトスピーチ対策に力を注いでいる。3月に起きたニュージーランドの銃乱射事件で、容疑者が生中継に利用。社会的な批判が高まっているためだ。まさに今、正念場を迎えている。

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「完全に機能する唯一のシステムをつくりあげるのは不可能だ。ただ、(問題を見つける)正確さを高め、新たな脅威の先を行くためにできることはたくさんある」

 フェイスブック(FB)の創業者で最高経営責任者(CEO)でもあるマーク・ザッカーバーグは5月23日の電話会見でこう強調し、人工知能(AI)を使って、フェイク(偽)アカウントの削除を加速させていることを明かした。

 テロ関連コンテンツを、AIが見つけ出す検知率はすでに99%を超え、技術の進歩はめざましい。しかし、偽アカウントを作る悪の勢力(バッドアクター)の勢いもすさまじい。

 この日、FBが明かした、今年1~3月期に削除した偽アカウントの数は、実に22億個。FBの全世界の月間利用者、約24億人に匹敵する数だ。3カ月だけで、20億を超える偽アカウントを作ろうとするハッカーの動きがあり、FBがそれらを食い止めたというのは驚きだ。

 SNSがここまで社会に広がるなかで、そのツールとしての怖さを人々に認識させたのは、3月にニュージーランド・クライストチャーチ市で起こった銃乱射事件だろう。オーストラリア人の男(28)が市内の二つのイスラム教礼拝所(モスク)を襲撃し、51人が犠牲になった事件だ。事件の凶悪さに加え、男が銃撃の様子をFB上でライブ中継したという事実は世界に衝撃を与えた。

 いったい何が起こったのか。

 5月初めにシリコンバレーのメンローパーク市にあるFBの本社を訪ねた。

 取材に応じたのは、暴力的なコンテンツなどを全世界で取り締まる基準をつくる責任者、FB副社長(グローバル・ポリシー・マネジメント担当)のモニカ・ビッカート。FBで、ヘイトスピーチなどへの対策について語る「顔」的な人物だ。

「あのような動画は、FB上では決して許されてはいない」と彼女はまず強調した。

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