タイトルにある「帽子」は、バブル経済がピークになる頃からかぶるようになった。伊藤雅代(森の本名)が作家・森瑤子として武装するために必要だったのか、帽子の鍔はどんどん広くなっていった。

「今、森さんの作品を読んでも十分に魅力的です。翻訳小説を連想させる硬質な文体、洒落たセンス、そして自身が抱える欲望と痛みを恐れずに書く姿勢。多くの女性が共感できる小説だと思います」

(ライター・矢内裕子)

■書店員さんオススメの一冊

『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』は、外国人労働者、移民、難民問題の基本知識から共生のヒントまでを網羅した、内容の濃い一冊だ。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 生まれた国で一生を過ごすことが当たり前ではなくなり、住むところや働く場所を求めて大量に人が移動している現代では、日本もこの問題と無縁ではいられなくなってきている。

 本書では、日本においての法律、社会保障、習慣、言葉などのさまざまな面で、日本に来る人々と共生するための態勢も議論も不十分であることを指摘しつつ、ヨーロッパの事例をもとに外国人労働者、移民、難民問題の現状とあわせて解説していく。

 さらに最終章では、外国人労働者の受け入れ拡大が決定した日本で、法律やシステム以前の問題として衝突することなく共に生活するためのヒントが提示されている。外国人労働者、移民、難民の基本知識から、共生のヒントまでを網羅した一冊。<来るのは「労働力」ではなく「人」>という言葉にハッとさせられる。

AERA 2019年5月27日号