新元号発表に臨んだ安倍晋三首相が強調したのは、「令和」の典拠は日本最古の和歌集である「万葉集」であり、日本の歴史上で初めて「国書」を典拠とした元号だということだ。同日、安倍首相はツイッターでこう呟いた。

「元号は、皇室の長い伝統と、国家の安泰と国民の幸福への深い願いとともに、千四百年近くにわたる我が国の歴史を紡いできました。日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるものともなっています」

 これに対し、小説家・柳美里さんはこうコメントしている。

「日本という国を構成しているのは、日本人だけではありません。日本語という言語を学び、日常的に使い、表現をしているのは、日本人だけではありません。日本で暮らし、日本語を母語とする外国人はたくさんいます」

 新元号が「令和」と決定したことに異論はない。安倍首相は会見で、「厳しい寒さの後に見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの思いをこめた」と語った。

 来たる「令和」という時代に、今後5年間で最大約34万5千人の外国人労働者が来日する。その数は時代が進むにつれ確実に拡大する。こうした日本を選択して来日する人々にとっても、元号の由来にふさわしい日本でいられるのか。日本社会は問われている。(編集部・中原一歩)

AERA 2019年4月15日号より抜粋