カッコよさをなるべく消すため5キロ太らせた。走り方も含め「平凡な人を表現するための動きをお願いした」。

 ということは、素敵なドンちゃんの姿は見られない!? いえ、もちろんそんな心配は無用です。彼の演技力+鋭敏な動きが冴え渡るシーンもちゃーんと用意されている。

◎「ゴールデンスランバー」
カン・ドンウォンのほか、ハン・ヒョジュ、ユン・ゲサンなど日本でも人気の俳優が集結! 1月12日から全国順次公開

■もう1本おすすめDVD 「ゴールデンスランバー」日本版と韓国版の見比べも

 日本で本作が公開されたのは2010年1月下旬。仙台に暮らす平凡な三十男が、見えない巨大な力によって首相暗殺の犯人に仕立てられ、彼を信じる仲間たちの助けによって逃亡を繰り広げていく。

 ノ・ドンソク監督が言うように、この映画で重要なのはとんでもない陰謀に巻き込まれるのが、平凡な日々を営む「普通の人」だということ。誰もが当事者になるかもしれない恐怖は、親しみやすい堺雅人が主人公だったからこそ余計、感じたに違いない。

 映画では彼を信じる人々が手を差し伸べていく。見終えた後で真っ先に考えたのは、自分にこんな不幸が降りかかった時に助けてくれる人はいるか、ということだ。

 公開から9年。AIは進化し日本でも監視カメラはそこら中に張り巡らされている。不特定多数の人間で埋め尽くされた渋谷の交差点で軽トラをひっくり返しても、面が割れる時代だ。果たして自分は他人から信頼される人間か。この映画を見ると、韓国版以上にそんな思いが頭をよぎる。

◎「ゴールデンスランバースペシャルプライス版」
発売・販売元:アミューズソフト
価格1500円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年1月14日号