大阪大学に進学し、迷わずクイズ研究会に入った。できたてのクイズ研。長戸さんの『クイズは創造力』を読み、手探りで活動した。この本は、問題文の型の分析や、問題文の中に潜む百人一首における“きまり字”のようなもの(ポイント)をつかむ方法、また“押し込み”といった早押し機のボタンテクニックなどを解説したもので、それまでクイズプレーヤーの暗黙知的であったものを明文化した本だった。奥畑さんは大学卒業後、公務員になる。

「もし『ウルトラ』が復活したときでも長期休暇がとりやすい。公務員試験には一般教養があったのですが、クイズをやっているとそこは勉強しなくてもよかったというのもありました」

 一方、久々の視聴者参加番組ということでクイズプレーヤーの注目を浴びているのが「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」(フジテレビ)だ。企画したのは入社3年目の千葉悠矢ディレクター(25)。特番からこの10月にゴールデンでのレギュラー番組となった。千葉さんはクイズ番組を見ていたわけでもなく、クイズ企画経験もゼロだったが、両国国技館でのあるライブ画像を見てひらめいた。

「1人が土俵にいて升席がそれを囲んでいる光景がすごく斬新で、これを早押しクイズでやったらどうだろうと思いました」

 タレント100人をそろえるのは予算的に無理だから一般参加者で。1人対99人だと1人の方にアドバンテージを与えないといけないのでジャンル指定で。いつの間にか視聴者参加型のマニアックなクイズ番組になった。すべては偶然だった。

「タレントが壁に紛れ込んでいるのも面白いと思った。一般人の横にタレントがいるという光景がめちゃめちゃ斬新。幸せな光景だと思いました」

「99人の壁」にも関わり、クイズ番組の裏にこの男ありと言われる放送作家が矢野了平さん(41)だ。「くりぃむクイズ ミラクル9」「今夜はナゾトレ」「高校生クイズ」「オールスター感謝祭」など数々のクイズ番組の現場に関わってきた。

「クイズってテレビ番組では万能な手法なんですよ。バラエティーにも情報番組にもできるし、お祭りもできる。すごくいろいろなパッケージのなかで道具として使いやすい。『99人の壁』もイメージは格闘技。“殴り合い”の代わりに“クイズ”という道具を使えば血を流さずに済む」

 そんな矢野さんは、子どもができたことで大きな発見があったと言う。

「あめを渡す時もグーの中のどっちに入っている?と聞く。正解!残念!は本能的で、そこにコミュニケーションと喜怒哀楽が生まれるのがクイズの本質」

(編集部・小柳暁子)

※AERA 2018年11月26日号より抜粋