関澤さんが、伊藤さんやスズキさんのほか、常連客を中心に声をかけて実行委員会が立ち上がった。「言い出しっぺ」である伊藤さんにとっても「まさか」の展開だったが、関澤さんは本気だった。

「えっ!? という感じでしたよ。でも、言い出した僕が後には引けないなと思って。ほかのメンバーも、なんかおもしろそうだからと加わってくれました」(伊藤さん)

 当初考えた上映場所は熱海城を見上げるサンビーチ、上映作品は『キングコング対ゴジラ』だった。クライマックスで熱海城が破壊される映画を、熱海城のすぐ近くで観ることを構想した。しかし、スムーズには進まなかった。

 まずは上映場所の問題。サンビーチは、管理者の静岡県に「前例がない」と一蹴された。そもそも屋外での上映は盗撮などの恐れがあることから、配給元の許諾が得られないことが多い。そこで、スクリーンや映写機が残っていたかつての映画館をあたったが、建物の安全性が確保されていないと消防に否定された。大型のスクリーンを持った市民会館などもなかったという。

『キングコング対ゴジラ』の上映許諾も配給元の東宝から得られなかった。

「そもそも、僕らは映画祭のことを何もわかっていなかったんです。あとになって知ったことだけれど、普通の映画祭は配給元と映画館などががっちりと結びついて立ち上げたり、行政のバックアップがあったりする。僕らのように思いつきで映画祭というのは現実的ではないようでした」(伊藤さん)

 今年6月にプレイベントを行い、10月に本番というスケジュールは当初から決めていた。しかし、17年10月の実行委員会立ち上げから半年以上、何も決まらないまま時間だけが過ぎていった。

「“もうできないかも”と思ったことは何度もあります。でも、人を集めて動いてもらっている責任感もあるし、やめようと思ったことは一度もありませんでした」(関澤さん)

 最終的に、上映作品は伊藤さんが脚本を担当した『ガメラ2 レギオン襲来』に決まったが、これもギリギリの決定だった。プレイベントの日は6月30日。しかし、6月の半ばになっても権利者である角川映画からの許諾は得られていなかった。

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最終的にOKをもらえたのは…