「思春期」と聞くと、ティーンエージャーの時期と思いがちですが、実は、小学校の中学年あたりから、助走は始まっています。「AERA with Kids 秋号」(朝日新聞出版刊)では、小学生の思春期に対する親の対応を、専門家たちがさまざまな視点からアドバイスしています。その中から、子どもたちの変化で気をつけたいポイントを紹介します。
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「今までは学校や友達のことをよく話してくれたのに、最近はなんだか無口。こちらから聞くと、なんだかめんどくさそうで無愛想になった」「きちんと整理整頓するタイプだったのに、最近では部屋や机の上が物置状態!」「最近、まわりの目をすごく気にするようになった」……。
それまでは純粋で元気な子どもだったのに、小学生4年生あたりからわが子のこんな変化を不安に感じる親は多く見られます。親は戸惑いますが、もしかしたら、そろそろ思春期の前触れなのかもしれません。
一口に思春期といっても、年齢によってその表れ方に微妙な差がある、と話すのは、医学博士で、心理カウンセラーとして多くの学校現場でも活躍する芳川玲子先生です。
「個人差はありますが、第二次性徴がはじまるのが9、10歳ごろ。ホルモンの分泌が盛んになり、成長へ体力が取られて、体内バランスが崩れやすくなる時期です。また、心理の面から考えると、自我が芽生えるのも10歳前後です。形成はまだ先ですが、自我が芽生えると、幼い万能感が薄れて、現実が見えてくるんです。正式な思春期の一歩手前、いわば“前思春期”なのです」
不機嫌だったり、イライラしていたりと思春期特有の態度は、体内の変化に要因があります。
「性ホルモンや成長ホルモンといったさまざまな脳内物質の分泌が活発になると、体調も不安定になりがちなのです。とくに、11、12歳くらいは体や脳が急激に発達する時期。“思春期のはじまり”です。感情中枢も刺激を受けて、イライラしたりだるくなったりと、本人もどうしたらいいかわからないくらい、心も体も不安定なのです」(芳川先生)
中高学年ともなると、学校生活も忙しいもの。勉強もいよいよ難しくなり、委員会活動や下級生との縦割り活動では、率先して動かなくてはいけません。家に帰ると、塾の宿題もてんこ盛り。この年代の子どもが「疲れた」と口にするのは、本当に疲れている証拠。子どものイライラの矛先が、身近な家族に向けられるのも仕方がないのです。
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