墨田区職人×台湾デザインで“化学反応” 海外進出で生まれる「高付加価値」

2017/12/01 11:30

 6代目の木戸麻貴さんは、勤め人をしていたころ、企業が社員向けの記念品として名前入りの革製ノートファイルを東屋に発注したことを覚えている。麻貴さんは「社員のみなさんがとても喜んでいたと聞かされて、『うちの仕事って、いい仕事なんだ』と気づきました」と振り返る。

 台湾の商談会には、売り買いの枠を超えた戦略がある。

「日本では、海外で評価されることによってあらためて(日本国内で)見直されることがあると思う。海外に出ることが東屋のPRにつながれば」(麻貴さん)

 悩みは職人の確保。「まるあ柄」などのデザインを通じて皮革製品への関心を高め、将来の職人候補を発掘したいという狙いもある。

 戦後、ちり取りなどブリキ製品を卸してきた根岸産業(墨田区堤通)は、60年代から銅製のじょうろを作り始めた。単価が低く、利益が薄くなりがちなブリキからの脱皮である。2代目の故・根岸修さんは試作品ができると、盆栽の専門家を訪ねた。こけを傷めたりせず、一気に大量の水を細かくあげることができるか。プロの盆栽家に商品をチェックしてもらう方法は息子の3代目、洋一さんも引き継いでいる。

 洋一さんは「(重視するのは)機能性だけですね」と言い切ったが、すぐに「じょうろって、シンプルにしていくと、たぶんこういう形で」と目をやったところには仕上がったばかりの銅製じょうろがやわらかく光っていた。使いやすさを追求していったその先に、デザイン性が待っていたということなのであろう。

 銅製じょうろは10年に行われた「すみだモダン」の最初の認証にリストアップされ、TDCのデザインコンテストにも入賞。デザインで付加価値を高めようとする潮流が、機能美に追いついてきたようだ。(ジャーナリスト・松田良孝)

AERA 2017年12月4日号より抜粋

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