工事の完成予想図。入り口も三つから五つに増やし、より多くの人に開かれた寺院を目指すという(写真/築地本願寺提供)
工事の完成予想図。入り口も三つから五つに増やし、より多くの人に開かれた寺院を目指すという(写真/築地本願寺提供)

 日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8月7日号で、新しい葬式の姿と、大きく影響を受ける仏教寺院のいまを追った。

 科学全盛の時代、お寺や仏教界も進化を遂げている。よりどころなき都市住民の縁を結ぼうと、築地本願寺が大改修中だ。その戦略とは。

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 東京・築地市場のほど近くにあり、インドの古代建築に倣ったお寺らしからぬ外観で有名な築地本願寺。訪れる外国人観光客らでにぎわい、8月初旬には4日間で約3万人を集める納涼盆踊り大会も開く。門信徒数は横ばい。地方の寺院のような門信徒の減少もない。だが敷地内は今、大規模な改修工事の真っ最中。複数の施設や新たなシステムを導入するというのだ。

 改修工事は10月末に終わる予定。いずれもこれまで築地本願寺と「ご縁がなかった人」の利用を想定する。というのも、とくに築地のある中央区では高層マンションなどに暮らす住民が多く、ほとんどが実家を離れて暮らす核家族。つまり、お墓やお骨、死とどう向き合うか、といった悩みがあっても、菩提寺との付き合いが薄くなったり、完全に断絶してしまったりと、檀家制度の枠外に置かれている。そんな求めに応える体制にするという。僧侶で総務部主任の吉川孝介さん(46)は言う。

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