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秋田はなぜ自民党が強いのか?

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山口亮子,渡辺豪AERA#安倍政権
自民党に関する47都道府県知事アンケート(AERA 2017年6月26日号より)

自民党に関する47都道府県知事アンケート(AERA 2017年6月26日号より)

 委員会採決省略の強行採決、実在した「怪文書」……。「安倍一強」のもと、自民党はなぜここまで傲慢になってしまったのか。その源流を「政・官の関係」「派閥弱体化」「小選挙区制」の現場で考察し、いかにして現在の一強体制が作られていったかを明らかにする。AERA 2017年6月26日号では自民党を大特集。今回は、東北で唯一参院選勝利の秋田にフォーカスした。

【写真】47都道府県の知事に自民党に関するアンケートを実施。結果はこちら

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「自民が特別強いわけではない。対抗勢力が弱すぎるだけ」

 昨年の参院選で、秋田県選挙区は東北で唯一、自民の推す候補が勝利。今年4月には知事選、秋田市長選が行われ、自・公・社民の支持した現職がいずれも次点に大差をつけて勝利した。

 秋田県の自民党は県議や市町村議の後援会、地方の支部のほか、商工会連合会、JA県中央会、医師会などの業界団体が持つ政治連盟に支えられた強固な基盤を持つ。1980年代からは各町内会のリーダー的存在を後援会に取り込み基盤を強化した。同党県連副会長で県議会の自民党会派会長・渋谷正敏県議(69)は、「国会議員と県議、市町村議の後援会組織が一本の線になるようにつながっているから、選挙に強いのだと思う」と説明する。

 しかし、今回の知事選をめぐってはゴタゴタもあった。昨年には一部に渋谷県議を擁立する動きがあった。渋谷県議は「あの話は自分と関係ないところで進んだもの」としつつ「知事と自民党は両輪というけれども、自民党が後輪になっているのではないか。我々は『(踏まれても蹴られても力のある者についていく)下駄の雪』じゃありませんと、ことあるごとに言っている」と不満を隠さない。

 とはいえ、自民党自体の力が落ちているとの指摘もある。民進党秋田県連代表の沼谷純県議(44)はこう批判する。

「自民からの意見や提案として出てくるものは、党本部のカーボンコピーであったり、自民系の首長の提案そのままだったりする。自分たちの権力を維持するという大前提の範囲内でしか議論しないから、議論の質が落ちるのは当然」

●組織票に変化も

「昔は選挙に対する意識の高い会員が非常に多かった。(建設業という職域を代表する)候補の得票数がかつてに比べて減っており、会員企業や従業員の選挙に対する意識が変わってきているということが結果的に言えるだろう」

 こう語るのは、県内建設業の事業主団体、一般社団法人秋田県建設業協会専務理事の荒川英俊さん(63)。同協会には264社が加盟している。会員数はピーク時の4割減だが、2014年から増加に転じ、若手も多い。別組織の政治連盟で政治活動を行っており、協会内に自民党の職域支部を置く。同業者の集まりだけに、「同じ目標に向かってまとまって進んでいくという決断力は強い」(荒川さん)組織だが、それでも課題があるのだ。

「昔は職域支部や地域支部に属していれば、必ず自民に入れるというのがあったが、今は実際どこに入れているのか分からないところはある」(県連関係者)

 自民が課題を抱える一方、対抗すべき野党はそれ以上のスピードで勢力を落としている。沼谷県議も「自民の強さというよりは、民進のつたなさが問題」と自ら認める。民進は比例当選の国会議員が2人いるが県議はわずか2人。県議の少なさは地域への浸透不足に直結する。多くの人材を取り込み、地方議員を増やす努力を怠ってきたツケが今、回ってきているのだ。野党共闘を実現しながら、東北で唯一野党側が敗北した16年の参院選について、共闘の関係者は「民進は組織・後援会の実がなく、穴あき状態だった」と明かす。

 東北で野党が勝利した主因はアベノミクスと環太平洋経済連携協定(TPP)への批判が広く共感を呼んだためだ。

●「私は消極的支持者」

 景気の低迷、農業の衰退は秋田でも言えるが、選挙のための最低限の組織力すら持てていなかった。民進は県知事選で自主投票、市長選では県連としての対応を決めることすらできなかった。対抗軸になれない中、自民への消極的支持が広がる。

 秋田市の73歳の男性は、「今の状態がいいとは思わないけれど、とりあえず現状を維持することを考えて自民の候補を選ぶ」としたうえでこう続けた。

「秋田をこう変えるんだとぶち上げる人が他から出てくれば、支持するかもしれない。私は自民の消極的支持者だから」

(編集部/山口亮子、渡辺豪)

AERA 2017年6月26日号


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