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「神の領域」に近づくゲノム編集 人間での研究はどこまで許されるか

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粥川準二AERA

国立成育医療研究センターの乾雅史さんの研究室ではマウス受精卵のDNAにわずかな編集をし、骨格などへの影響を検証している(撮影/粥川準二)

国立成育医療研究センターの乾雅史さんの研究室ではマウス受精卵のDNAにわずかな編集をし、骨格などへの影響を検証している(撮影/粥川準二)

ゲノム編集だけが遺伝子治療の方法ではない。埼玉医科大学では、ウイルスを使う方法の研究も続いている(撮影/粥川準二)

ゲノム編集だけが遺伝子治療の方法ではない。埼玉医科大学では、ウイルスを使う方法の研究も続いている(撮影/粥川準二)

ゲノム編集のしくみ

ゲノム編集のしくみ

受精卵、体細胞のゲノム編集

受精卵、体細胞のゲノム編集

 遺伝子を効率よく切り貼りする「ゲノム編集」。使い方によっては、デザイナーベビーを現実にする技術だ。条件付きで「容認」する動きが出始めたが、課題は克服されたのか。

 1998年に日本で公開されたSF映画「ガタカ」では、生まれつき遺伝子操作され、知力や体力が優れた者が「適正者」として優遇される一方、自然に生まれた者は「不適正者」として差別される未来社会が描かれた。今や、この映画は想像の産物とは言い切れなくなった。遺伝子を効率よく正確に切り貼りできる「ゲノム編集」が急速に発展。植物や動物だけでなく、ついに人間にも応用され始めてきたからだ。

 すでに大豆などで実用化されている「遺伝子組み換え技術」では、ウイルスなどを使って特定の遺伝子を細胞に送り込むのだが、その遺伝子が細胞側の「DNA」のどこに組み込まれるかわからない方法が大半だった。

 ゲノム編集では、DNAを切る「ハサミ」の役割をする酵素と、切りたい位置にそれを導くガイド役の分子がセットで働く。このセットが細胞に入ると、ガイド役が狙った位置を見つけ出し、ハサミがDNAを切って遺伝子を壊す。ここに新しい遺伝子を組み込むこともできる。2013年に開発された「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャス9)」という技術で、急速に普及した。

 ゲノム編集の応用方法は広い。肉付きのいいウシや、おとなしくて養殖しやすいマグロ、大きなタイ、病気になりにくいイネなどの研究開発が進んでいる。

●エイズ治療研究で進展

 医学分野では、ゲノム編集を使った遺伝子治療の臨床研究が行われており、後述するようにHIV(エイズウイルス)などで良好な結果が出始めている。再生医療にも応用される。

 人間でも動物でも、ゲノム編集をする対象が体細胞であれば、改変された結果がその子孫に伝わることはない。しかし受精卵や初期胚、精子、卵子であれば、改変は子孫に伝わる。人間の受精卵ゲノム編集に倫理的な懸念が指摘されるのはそのためだ。

 研究者らは、受精卵にゲノム編集を行うことは「顕微授精(体外受精の一種)よりも簡単」と口をそろえる。

 効率の高さを数字で表現することは難しいが、「たとえばヒトのES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞を対象とした場合、従来の遺伝子組み換え技術では1千万個に1個の成功でしたが、ゲノム編集では100~1千個に1個になります」と、埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの三谷幸之介教授は解説する。

 また、どの種のどの細胞でも行え、遺伝子を切って壊すだけなら痕跡が残らず、自然界で起こる突然変異と見分けがつかないことも、ゲノム編集の特徴だ。

 基礎医学研究では、特定の遺伝子を働かなくさせた「ノックアウトマウス」がよく使われる。この作製には従来、ES細胞の狙った位置に遺伝子を組み込み、成功が確認できたものだけを選んで胚に注入する、といった複雑な工程が必要で、数百万円の費用と、1~2年の時間がかかった。


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