平和的支援を担う人々が犠牲に…(※イメージ)
平和的支援を担う人々が犠牲に…(※イメージ)

 7月1日の夜に起きたバングラデシュの首都ダッカでのテロ。その後、イラク、サウジアラビアでもテロが続いた。日本人が犠牲になったテロを、どう見ればいいのか。

 イスラム教の休日である金曜の夜、バングラデシュの首都ダッカの高級住宅街で銃撃音が響いた。武装集団がレストランを襲撃。日本人7人を含む人質20人が犠牲になった。「イスラム国」(IS)は翌2日、インターネットで犯行声明を出し、

「十字軍の国民に告げる。イスラム教徒の地でお前たちの安全はない」

 と脅しの言葉で締めくくった。

 昨年11月にはパリで、今年3月にはブリュッセルで大規模なテロが発生。6月下旬以降は、それが連続している。

●現場の治安対策は厳重

 ダッカ事件の現場は多くの大使館があって外国人が多く、治安対策も厳重な地域。そこを武装集団が襲撃したテロは、パリ、ブリュッセル、イスタンブールと同様に「都市ゲリラ」的だ。かつて、アルカイダのテロは「同時多発」的な爆弾テロだったが、より戦闘的だと言っていい。

 イラクとシリアでは米軍主導の有志連合やイラク政府によるIS掃討作戦が行われ、ISは劣勢に立たされているとされる。それでも、IS支配地域の外でテロが多発。IS対応の難しさが浮き彫りになった。

 だが、本当にすべてのテロにISが関与しているのか。

 バングラデシュ治安当局は、ISと今回のテロの関連を否定している。ISの声明にはニュースで流れた以上の情報はなく、実行犯がISと連絡をとったとは思えない。声明に出てくるのはイタリア人だけで、日本人についての記述はない。イタリア人の人質がいることは早い段階でイタリア政府が確認し、欧米の通信社や衛星テレビで流れていた。一方で、日本政府は日本人の人質情報を出さなかった。

 事件発生から治安部隊の突入まで10時間以上あり、実行犯が外部と連絡をとる時間は十分あった。もし、実行犯やその所属組織がISとつながっていれば、日本人のこともIS声明に入ったはずである。2015年1月の湯川遥菜さん、後藤健二さん殺害事件の際に、「日本が戦争を仕掛けてきた」と日本を敵視していたISが、日本人の存在を隠す必要はない。IS声明に日本人の記述がないことは、実行犯とISの間に直接の連絡がなかった証左であろう。

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