採用基準を下げず、多くのリケジョに入社してもらいたい。そのための作戦が、「手作りの採用広報の強化」だった。女性社員が学生の悩みに答えるリケジョ専用問い合わせ窓口を作ったり、リケジョ向け採用パンフレットを作ったり。

 なかでも効果が高かったのは、15年春に名古屋地区と関西地区で計2回開催した工場見学会だ。理系女子学生各40人が参加し、例えば名古屋地区ではロケット、ロケットエンジン、モノレールのほか、いま話題のMRJ(三菱リージョナルジェット)も見学。1泊2日で、交通費と宿泊費は三菱重工が負担した。参加した学生からは、「説明会場と違って、現場がイメージできた」「三菱重工が化学系の学科も採用しているとは知らなかった」という感想のほか、こんな声も寄せられたという。

「自分の学科にはほかに女子学生がいないので、他校のリケジョ同士、悩みを共有できた」

 見学会がきっかけとなり、実際に選考を受けて内定した学生も多く、16年卒のリケジョ採用数は前年の3倍になる。

「『やればできる』と現場は大喜びです(笑)。16年卒採用の検証を十分にして、次年度以降につなげたい。『男性職場』のイメージを変えたいと思っています」(前出・人事担当者)

 そもそも、どうしてこれほどのリケジョ争奪戦になっているのか。理系向け就職ナビサイト「理系ナビ」の渡辺道也編集長は言う。

「安倍政権による女性活用推進に加え、日本企業もダイバーシティーを重視するようになり、女性を必要としている。リケジョは数が少ないので、必然的に取り合いになります」

AERA 2015年11月23日号より抜粋