「50歳の大台に乗る前にウェディングドレスだけでも着たいと思いました。だって結婚は、70歳でもできるでしょ」

 ソロウェディング代32万円のほか、交通費、食費などを合わせて計35万円の出費も高くは感じなかった。

「今日のプリンセスです」

 スタッフにそう紹介されることから始まるソロウェディングは、まるで夢のようだった。撮影では、追っかけをしている「カドさま」に徹底的にこだわった。松の屏風を背に、角松の置物を置き、手にはお気に入りのツアーパンフレット。出来上がった写真を見た母と兄弟は、角松さんと結婚したんだね、と言って優しく微笑んだという。

 帰宅してからもプリンセス気分が抜けず、バラの花を買う日々が続いた。さらに、職場の休憩室に自作のウェディングアルバム2冊を置いて、啓蒙活動にも励んだ。こんなに幸せな気持ちになれるならと、今後は3年ごとにやりたいそうだ。結婚観は変わりましたか?

「このまま独身でいいや、と思うようになりました。憧れていた結婚の象徴であるドレスを着たことで、完全にふっきれたのかもしれません」

※AERA 2015年6月22日号より抜粋