田原総一朗・ジャーナリスト
田原総一朗・ジャーナリスト

 ジャーナリストの田原総一朗さんは、政策立案よりも選挙活動に力を注ぐ政治家たちに苦言を呈する。

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 岸田文雄内閣の”中間評価”となった衆参5補欠選挙は、自民党が4勝1敗と勝ち越した。

 ただ、衆院山口4区以外はきわどい接戦で、辛勝だったのである。

 たとえば、参院大分選挙区では、わずか341票差という薄氷の勝利であり、衆院千葉5区では、野党が候補を一本化できなかった”敵失”に助けられた面がある。

 岸田内閣の支持率は、岸田首相がマスメディアを振り切って、単独でウクライナに飛び、ゼレンスキー大統領との会談を実現させたこと、そして韓国の尹錫悦大統領の好意的な提案で、徴用工問題について韓国側が資金を負担してくれることになり、日韓関係が好転したことなどで上昇したが、それ以前は何と30%台で、政権交代が起きて当然という低さであった。

 これまで何度も述べてきたが、日本の問題は政権交代を担うべき政党、つまり強い野党がいないことだ。野党が弱すぎるのである。

 新聞やテレビなどの支持率調査で、自民党の支持率は30%超あるのに、野党第1党の立憲民主党の支持率は10%前後なのである。

 一つには、野党がいくつにも分裂していること。さらに、ずばり言えば、立憲を始め、いずれの野党にも政権奪取の意欲がはなはだ薄いことが原因だ。

 野党の議員たちは、厳しい自民党批判をしていれば、選挙で何とか当選できる。それに政党助成金が得られる。言ってみれば、野党議員でいる現状が望ましいのであり、政権など奪取したら大変な事態になる、と恐れているのである。

 それに、野党議員たちは選挙で当選するために、エネルギーと神経の90%近くを注がなければならず、この国をどうすべきかといった政策立案などに注ぐエネルギーはほとんどないのである。

 この点は自民党議員たちもほぼ同様で、だから政策については官僚たちに委ねているのである。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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