岸田首相
岸田首相

 岸田文雄政権の原子力政策を専門家はどう見ているのか。元原子力委員会委員長代理・鈴木達治郎さんが現状を憂う。

【図】原子力発電所の現状はこちら

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 岸田政権は福島第一原発事故以降、原発依存度をできる限り低減するという政府の政策を大転換しました。2021年に閣議決定したエネルギー基本計画では、30年度の電源構成における原発の比率を20~22%とし、「必要な規模を持続的に活用していく」と記されています。

 私はその文言自体が矛盾すると思っていましたが、岸田政権はさらに踏み込んで原発のリプレース(建て替え)を推進する方針を明確に打ち出したのです。

 ならば、原子力が必要であるという検証をしなければならないはずですが、政府はそれすらしないまま、短期間のうちに脱原発政策を放棄したのだと見ています。

「原則40年、最長60年」とする運転期間を延長することについて、私が最も懸念したのは、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁が経済産業省と事前に面談し、法改正などの検討を進めていたことです。

 もちろん、役所間で相談することはあるでしょう。ですが、きちんと規制委に報告して目に見える形で行うべきでした。こんなことが横行するようでは規制委の独立性が心配になります。

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