永田町で幅をきかせている「世襲」をどうとらえたらいいのか。元衆院議員の豊田真由子さんが分析する。

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 日本政治において「世襲」は、単に有利に働く要素というよりも、むしろ必須条件に近く、「世襲でも大金持ちでも著名人でもない一般人の議員」を見つけるほうが難しいくらいです。

 これは、選挙や政治活動に莫大な資金が必要なこと、血みどろの公認争いで、世襲は「皆(特に国政への野心を持つ、地元政界の怖いおっちゃんたち)が一番納得でき、丸く収まる」形であること、数は力で、質よりも議席獲得が重視され、政党は自前で当選できるコスパの良い候補者を求めること、有権者も企業や団体も、結局、血統や安定を好むこと、有権者には、選挙の前に既に政党が選んだ偏りある候補者しか実は選択肢がないことといった、現行政治システムの当然の帰結です。

 現代の民主主義国家において、“親ガチャ”で公職たる国民の代表が決まる不平等不公正、必ずしも資質や能力の十分でない人が国の舵取りや政策決定を行うリスク、経済的弱者などの気持ちが理解しにくい、既存制度の変革を望まない、多様で有為な人材の新規参入を阻む、国民の政治への信頼を損なう、といったマイナス面がこのシステムにはあります。

 世襲議員は、後援会や政治資金や人脈などをそっくり引き継げるので、死に物狂いで地元回りや資金繰りを行う必要がなく、落ち着いて学び中央で仕事ができる、執行部の顔色を気にせず強気の発言ができる、“殺るか殺られるか”の政界で、いじめられず陰謀に陥りにくく安定するなどの点は、国民にとってプラスの面もあります。

 幼い頃から利害で人が寄ってくる、反対派から嫌がらせされる、何をやっても七光りと言われるなどの世襲の苦労もあります。そんな色眼鏡をはね返し、自ら力を培い活躍する、有能な努力家の方もちゃんといます(そうでない方も、確かにいます)。広く国民の信頼を得るためには、自身の優位性を自覚し謙虚に研鑽し、国と国民のために真摯に働くことが求められると思います。

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