白衣姿もサマになる(撮影/小野田尚武)
白衣姿もサマになる(撮影/小野田尚武)

 44歳で大学進学を決意したタレントのいとうまい子さんは、芸能活動と主婦業を両立させながら進学を重ね、56歳の今は博士課程で基礎老化学を学びながら、AIベンチャーの研究員をしている。「学ぶことが楽しくて仕方ない」という元アイドルが最先端の研究者に転身した理由とは?

【写真】いとうまい子さんと大学院で開発した「ロコピョン」

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 草木も眠る丑三つ時。東京大学の塀を乗り越えて外に出る二つの影。元アイドルのいとうまい子さんと東大の大学院生である。研究で遅くなり門を閉じられてしまい、仕方なく決行された脱出行動だった。早稲田大学大学院人間科学研究科の博士課程に在籍中のいとうさんは、去年から東大との共同研究で食品由来の抗老化成分の探索を行っている。この日は仕事で遅くなったが、実験室に立ち寄っていた。

「もう夜の12時を回っている時間だったのですが、わからないことを聞くために実験室の若い学生さんにメッセージを送って質問したんです。そうしたら『実験室にいるんですか?』と返事が来て、『それなら今から行きます』って言ってくれたんです」

 しかしすでに大学の門は閉じられている。どうやって来るつもりかと聞くと、「何とかして行くから大丈夫」という言葉どおり、その学生は深夜にもかかわらず実験室に駆けつけてくれた。「門は閉まっていたので、塀を乗り越えてきました」と笑う学生と作業を終えた。しかし門が閉まっているので帰るに帰れないと思っていたら、その学生が「大丈夫だからついてこい」と言う。

「学生さんについていくと『ここの塀が一番低い』と教えてくれました(笑)。2人で乗り越えて外に出たんです。“タレント活動でできなかった青春をやり直してるんだなぁ”って実感した瞬間でした。後で聞いたら、深夜でも開いている門はあったそうで(笑)。おかげでいい冒険ができました」

 門の外に出たとはいえまだ深夜。助けてくれた学生に、「どうやって帰るつもりなの? タクシーで送るわよ」と言うと、その学生は「学生の分際ですから、タクシーには乗りません」と平然と歩いて帰っていったという。

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